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循環医学分野 「平成29年度」

平成29度(第16回)
循環医学分野 一般研究助成金受領者一覧
<交付件数:20件、助成額:2,000万円>

脳血管障害及びその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
上野 祐司
アブストラクト
研究報告書
順天堂大学医学部
神経学講座
脳梗塞後の軸索再生・機能回復を標的としたSemaphorin3A阻害薬の治療応用 100
本研究は、軸索伸長阻害因子であるSemaphorin 3Aを分子標的とし、脳梗塞後の軸索再生、且つ、機能回復に関わるメカニズムを解明した研究である。ラット脳梗塞モデルの急性期から亜急性期のperi-infarct areaにおいて、Semaphorin 3Aが神経細胞に増加することを確認した。選択的Semaphorin 3A阻害薬を脳内局所投与することで、軸索再生が増加し、機能回復が促進された。In vitroでは、脳虚血後にSemaphorin 3A阻害薬を投与することで、神経細胞内のRnd1/R-Ras/Akt/GSK-3βシグナル、軸索に発現するリン酸化GSK-3βを介して軸索再生が促進された。そして、Semaphorin 3A阻害薬がアストロサイト由来のエクソソームへ作用し、軸索再生促進作用を有し、その分子病態機構を初めて明らかにした。本研究成果は、脳梗塞後の軸索再生、機能回復に関わるメカニズムを解明した臨床的意義が高く、新規治療薬の開発が実現できる可能性がある。
片野 広之
アブストラクト
研究報告書
名古屋市立大学大学院医学研究科
生体情報・機能制御医学専攻 社会復帰医学講座
脳神経外科学/ 医学・医療情報管理学
石灰化プラークのイオン半導体ゲノムシーケンス分析による頚動脈粥腫安定化機序の究明 100
石灰化頚動脈粥腫におけるゲノム変異については明らかでない面が多い。頚動脈粥腫をCaスコアをもとに高・低石灰化2群に分け、核酸抽出後、エクソンを濃縮、HiSeq2500(Illumina)を用いて塩基配列を取得した。hg19へマッピングし、Duplicateリードを除去した。総SNV(SNP)数は1標本あたり115,982-126,947、Ins数は6,722-7,794、Del数は8,739-10,006であった。SNVはG>A、挿入は(G)InsC、欠失は(CT)delCが高頻度であった。変異塩基出現頻度を比較すると、高石灰化粥腫群でFGFR4, ABCC6のSNP平均AFが1.5-2.1倍と高かった。頚動脈粥腫について全エクソームシーケンスによりゲノム変異を比較検討し、高石灰化粥腫において、血管新生および石灰化に関与する遺伝子の一塩基多型の差異を認めた。
木村 和美
アブストラクト
研究報告書
日本医科大学大学院医学研究科
神経内科学分野
全国多施設前向き経口抗凝固薬内服中に発症した脳卒中患者の登録研究 100
心房細動による脳梗塞の予防に、DOACが登場したが、DOAC内服中に脳梗塞や脳卒中を起こすことがある。しかしながら、その脳梗塞や脳出血の患者特徴は分かっていない。全国20施設で、抗凝固薬内服中に脳梗塞や脳卒中患者を前向きに登録し、その特徴を明にする。脳梗塞患者も脳出血患者も高齢であり平均80歳であった。
脳梗塞は、ワルファリン内服者にくらべDOAC内服者は、発症時の重症度が軽症であった。DOAC内服者の脳梗塞は、4人一人、不適切使用であった。脳出血は、ワルファリン内服者とDOAC内服者は、発症時の重症度が同じあった。抗凝固薬内服中の脳卒中は、高齢者において多いことが明らかとなった。これまでの第三相大規模試験では、高齢者のデータは少なく、リアルワールドとは大きくかけ離れている。今後、どう、高齢者において脳卒中を予防するかが大きな課題である。
島村 宗尚
アブストラクト
研究報告書
大阪大学大学院医学系研究科
健康発達医学講座
S100A9/CD36シグナルを標的にした脳梗塞における抗血栓ワクチンの開発 100
本研究では、マウスにおいてS100A9ペプチドでの長期効果、血小板シグナルへの作用、サルにおいて臨床で使用可能なアジュバントであるアラムでの抗体産生の有無を検討した。
結果として、ワクチン接種により抗体価と効果は少なくとも2ヵ月は持続することが明らかとなり、ブースターにより低下した抗体も再上昇することが明らかとなった。また、長期間経過後も、出血時間に影響はないことが明らかとなり、本ワクチンの長期有効性、また安全性が示唆された。また、血小板におけるJNK, VAV1のリン酸化がワクチン群では抑制されていることから、ワクチン投与により、血管傷害後に生じる血小板でのS100A9/CD36カスケードによる血小板凝集が抑制されることも明らかとなった。さらに、ヒト・サルエピトープに対応したS100A9ワクチンのサルでのアラムとの投与で抗体の産生を認めたことから、本ワクチンの臨床応用への可能性が示唆された。

心疾患及びその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
赤澤 宏
アブストラクト
研究報告書
東京大学大学院医学系研究科
循環器内科学
アンジオテンシン・C1q系による老化制御と病態形成の機序解明 100
高齢者に多くみられる疾患の発症機構を明らかにし、その予防法と治療法を開発することは、社会的にも必須の課題である。レニン・アンジオテンシン系とC1q・βカテニン系による老化制御と疾患発症のメカニズムを解明するために、アンジオテンシン・C1q axis活性化の分子機構と、老化関連疾患におけるアンジオテンシン-C1q axisの病態生理学的意義について検討を行った。さらに、アンジオテンシン-C1q axisを抑制する新たな老化関連疾患治療法の開発へ向けた基盤研究を行った。このようなアプローチにより、レニン・アンジオテンシン系とC1q・βカテニン系による老化制御機構を明らかにし、老化関連疾患に対する次世代の新たな創薬開発を進めて行きたい。
浅海 泰栄
アブストラクト
研究報告書
国立循環器病研究センター
心臓血管内科
冠動脈硬化巣病変進展・性状と心筋虚血発生の相互作用の検証 100
非造影T1強調核磁気共鳴画像法(T1WI)上 高信号冠動脈プラークを呈する冠動脈プラークが将来の心臓イベントと関連するとされる。虚血性心疾患における冠血行再建術の適応は心筋虚血発生に基づき決定する事により予後が改善することも知られている. 虚血性心疾患の診療において古典的な心筋虚血診断に基づく診療が最も優先されるのか、冠動脈プラーク性状に基づいた診断・治療が優先されるのか未だ十分に検証されていない。また心臓事故発生を抑制する手法の開発が求められている状況にある。本研究では(1)ヒト剖検心を用いたT1WI所見と病理像の対比(2)安定冠動脈症例でかつ中等度狭窄病変を呈する症例を対象にT1WI所見と冠血流予備能の検証(3)至適薬物療法が冠動脈硬化症の予後の検証を用いてアプローチを行なった。本研究の結果はT1WIを用いた冠動脈硬化症のスクリーニング技術の発展の一助になり得る。
扇田 久和
アブストラクト
研究報告書
滋賀医科大学
分子病態生化学
接着分子系と増殖因子受容体シグナル系との相互作用を基盤とした新規心不全治療開発 100
心臓介在板の接着分子系を構成する分子の一つにアファディンがある。心筋細胞特異的アファディンコンディショナルノックアウト(cKO)マウスは、心臓圧負荷に対して容易に心機能が低下し心不全となるが、その分子機構は不明である。本研究では、接着分子系と同じく細胞表面に存在する増殖因子受容体のTGF-β受容体に着目し、この分子とアファディンとの相互作用の観点から解析を行った。アファディンはTGF-β受容体と心筋介在板で共局在していた。この相互作用によりTGF-β受容体下流のシグナル分子であるSmad2、TAK1およびAktの活性化が促進した。逆に、TGF-β受容体阻害薬を投与したところ、アマクロファージ浸潤、心筋線維化が増加した。以上より、アファディンはTGF-β受容体と結合して、心機能維持に作用していると考えられた。両者の相互作用を増強できる化合物などを今後見出すことにより、心不全に対する新しい治療法開発を目指す。
大石 由美子
アブストラクト
研究報告書
東京医科歯科大学難治疾患研究所
細胞分子医学分野
ω-3脂肪酸の新しい抗炎症機序の解明と動脈硬化治療への応用 100
慢性炎症は、生活習慣病や心血管病に共通した基盤病態である。炎症の慢性化に重要なマクロファージは、多様な生理活性脂質を産生する。このうちオメガ3不飽和脂肪酸は抗炎症作用を示し、動脈硬化の進展を抑制するが、その機序は明確ではない。本研究はオメガ3脂肪酸による、エピゲノム制御を基盤とした新しい炎症制御メカニズムを解明し、動脈硬化におけるオメガ3脂肪酸合成の病態生理学的な意義を明らかにすることを目的として実施した。細胞内オメガ3不飽和脂肪酸量の低下したSREBP1欠損マクロファージと野生型コントロールマクロファージを用いた網羅的転写解析の結果、SREBP1欠損マクロファージでは、PPARリクルートメントの有意な低下がみられた。このひとつの理由として、細胞内の不飽和脂肪酸が、内因性のPPARリガンドとして作用している可能性があると考えられた。
小倉 正恒
アブストラクト
研究報告書
国立循環器病研究センター研究所
病態代謝部 脂質代謝研究室
コレステロール排泄機構の破綻と動脈硬化重症化に共通する脂質分子の探索と臨床応用 100
血中HDL-C値を単純に増加させる戦略は動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)発症を予防しない。そこで「HDLは濃度(量)よりも機能(質)が重要」という考えに基づき、放射性コレステロールで標識した培養細胞に患者HDL分画を作用させ、培地中に引き抜かれた放射能をカウントするコレステロール引き抜き能の測定系が開発され、我々を含む国内外のグループが、搬出能が種々の疾患のサロゲートマーカーであることを報告している。しかし各施設の培養細胞と保存プール血漿を用いるため、臨床検査としての標準化は不可能であり、搬出能を規定する因子の探索研究はまだ少ない。そこで本研究の目的は引き抜き能低下とASCVDの発症・重症化の共通脂質分子を特定することとし、酵素法およびリピドミクス解析を用いて引き抜き能低下と重症動脈硬化に共通する脂質分子を探索し、複数の候補分子を同定した。今後はメカニズムの解明やより多数の検体での確証が必要である。
桑原 宏一郎
アブストラクト
研究報告書
信州大学医学部
循環器内科
心筋の恒常性維持と破綻におけるclassI HDACの意義の解明 100
慢性心不全は予後不良の症候群であり、病態解明と新規予防・治療法開発が望まれる。本研究ではヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)1・2の成体の心機能維持における意義についてその誘導性心筋特異的ノックアウトマウス(HDAC1・2 cdKO)を用いて行った。本マウス(HDAC1・2 cdKO)のメスではタモキシフェンによる誘導後4週後から継続的かつ著明な心機能低下と心拡大を示し、またANP、BNPをはじめとする心筋胎児型遺伝子の発現亢進を認めた。心拍数の有意な変動は認めなかった。一方で、オスのHDAC1・2 cdKOでは明らかな心機能低下や心拡大は認めなかったが、ANP、BNPをはじめとする心筋胎児型遺伝子の再誘導はメスに比較して程度は軽いものの認められ、HDAC1、2が直接的にこれら遺伝子の発現抑制に心筋において働いていることが示唆された。これら結果より成体の心筋の機能維持にHDAC1、2が特にメスにおいて必須の働きをしていることが明らかとなった。
笹野 哲郎 東京医科歯科大学保健衛生学研究科
生命機能情報解析学
セルフリーミトコンドリアDNAを介した、心房細動が全身炎症を惹起する機序の解明 100
佐波 理恵
アブストラクト
研究報告書
大阪大学大学院医学系研究科
心臓再生医療学共同研究講座
心内膜による心筋分化増殖制御機構の分子基盤 100
心内膜は心臓形成過程で心筋とともに出現して形態形成に寄与し、心筋細胞の分化増殖を制御する必須な役割を担う。しかしその細胞特性に関する既存の知見は心筋と比較して極めて少ないのが現状である。本研究は、マウス胚心円筒形成過程での心内膜細胞系列の系譜と細胞特性の分子メカニズムを転写因子 SOX17 の発現を指標として解析し、この知見を元にした多能性幹細胞からの心内膜細胞系列分化誘導系の開発及び将来的な部位特異的なヒト心臓オルガノイド系構築を目指した心筋分化増殖制御機構の解明を目的としている。遺伝子改変マウスを用いて行った初期胚 3D イメージングでは、予定心臓領域だけでなく動脈内皮前駆細胞群においても SOX17 の発現が認められた。この結果を元に、多能性幹細胞からの高効率な心内膜分化誘導系構築のため、胚体内での中胚葉から心内膜前駆細胞への初期分化過程における連続的な単一細胞発現プロファイル取得を試みている。
柴 祐司
アブストラクト
研究報告書
信州大学医学部
再生医科学教室
霊長類iPS細胞を用いた心筋再生研究 100
虚血性心疾患は我が国だけでなく世界的にも主要な死亡原因である。心臓は自己再生能に乏しく、一旦傷害された心機能は現状の治療法では回復が不可能である。そこで心筋梗塞後心不全に対する新たな治療法として、多能性幹細胞を用いた再生医療の可能性が注目されている。本研究では、心筋再生医療を実用化するためにヒトに近いカニクイザルモデルを使って以下の二つの課題を解決する。
1)慢性心筋梗塞モデルにおける有効性の証明
5頭のカニクイザルからiPS細胞を樹立した。グラフト心筋細胞をホスト心臓内で同定するために、GFP遺伝子をiPS細胞に導入した。今後、心筋細胞を作製し、in vivoの移植試験を行う予定である。
2)移植後不整脈のリスクコントロール
ヒトiPS細胞から心筋細胞を作製し、さらにペースメーカー細胞を純化することに成功した。作製した心室筋細胞をカニクイザル心筋梗塞モデルに移植し、現在不整脈頻度を観察中である。
竹藤 幹人
アブストラクト
研究報告書
名古屋大学医学部附属病院
循環器内科
慢性心不全の新規診断薬・治療薬の開発 100
心不全は重篤な病態である。心不全患者数・死亡者数が増え続けているのが現状であり、慢性心不全の新規治療法の開発が期待されている。申請者は、心筋特異的に発現するGタンパク共役受容体であるCRHR2が新たな心不全発症因子であることを報告した。この研究を基に「血中CRHR2アゴニストの測定法」の開発を本研究の目的とし、妥当性かつ精度の高い臨床診断用のCRHR2アゴニスト測定法の開発を進めるため、CRHR2アゴニストを特異的に認識する抗体を複数精製した。これらの抗体を用いて、測定キットを作成し、最適な抗体の組み合わせを検討した。複数の抗体の組み合わせにより最適化を図り、精製済みCRHR2アゴニスト濃度の測定を行った。測定の結果、精製済みCRHR2アゴニストの測定は可能であることを確認したため、今後はヒト血液サンプルを用いた測定を行う準備を進めている。
林 研至
アブストラクト
研究報告書
金沢大学医薬保健研究域医学系
循環器病態内科学
次世代シークエンサーを用いた遺伝性不整脈の遺伝子解析およびゼブラフィッシュを用いた不整脈重症度評価と個別化治療 100
次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析により、遺伝性不整脈において数多くの遺伝子多型が見出されるようになった。それらの多型が疾患発症にどの程度寄与しているかどうか明らかにすることは極めて重要であると考えられる。
遺伝性不整脈88症例に対して次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析を行なったところ、先天性QT延長症候群17例、および若年発症徐脈6例に遺伝子変異を見出した。
若年発症徐脈より見いだされたprotein truncating variantについて、Crispr/Cas9システムを用いてヒトLMNA遺伝子のホモログであるゼブラフィッシュlmna遺伝子に変異を導入した。受精後48時間の胚において、lmna遺伝子変異をもつゼブラフィッシュでは心拍数の有意な低下を認め、72時間後において光学マッピングを用いて測定した心室内伝導速度の有意な低下を認めた。
平井 希俊
アブストラクト
研究報告書
関西医科大学
薬理学
心不全治療に向けた成熟心筋細胞の増殖制御の試み 100
生後しばらくすると、心筋細胞は細胞周期の休止期に入り、その後増殖しないため、一度傷害された心筋は再生されることがない。そのため、心筋梗塞・心不全といった心疾患に対する再生医療が待ち望まれている。現在、iPS細胞由来の心筋細胞の細胞移植がもっとも注目を浴びているが、心機能の回復は好ましくない。最近、ErbB受容体を活性化することにより、直接、成熟心筋細胞の増殖を誘導しうる可能性が示唆された。本研究では、ErbB受容体を心筋細胞で活性化させ、これまで不可能と考えられてきた成熟心筋細胞の増殖を誘導できるかどうかを1細胞レベルで直接可視化するマウスの作製に成功した。実際にこのマウスの心筋細胞でErbB受容体が強発現していること、そしてこれらの細胞の核が赤く光ることを確認した。現在、EdUの取り込みにより、ErbB受容体を強発現している心筋細胞の細胞周期活性が活性化しているかどうかを、確認中である。
増田 茂夫
アブストラクト
研究報告書
大阪大学大学院医学系研究科
心臓血管外科
重症心不全に対するiPS臨床応用へ向けた未分化細胞除去技術の新規開発 100
ヒトiPS細胞を利用した再生医療の実現に際し、安全性担保、特に腫瘍形成回避が必要となる。本研究ではiPS細胞由来未分化細胞を除去することを目的とし、分子標的阻害剤によるex vivo purgingを試みた。まずヒトiPS細胞を対象にEpigenetic修飾薬であるBET阻害剤を添加したところ、同剤が強力なNanog阻害剤と判明した。次にヒトiPS由来心筋細胞を同剤処理したところ、残存未分化細胞が効率的に除去された。一方ヒトiPS由来心筋細胞はintactであり、選択的標的化が示唆された。さらにCDK9 or 1阻害剤がBET阻害剤(Nanog阻害剤)と共に相乗効果を呈した。BET蛋白BRD4はCDK9やCYCLIN Tと転写complexを形成することから、より深いNanog抑制効果が相乗効果を説明すると予想される。以上より“ヒトiPS細胞”を対象とした分子標的治療の可能性が示唆された。
矢作 直也
アブストラクト
研究報告書
筑波大学
医学医療系 ニュートリゲノミクスリサーチグループ
エネルギー代謝制御を担う核内情報処理機構の解明 100
過食に伴い体内の中性脂肪が過剰になる状態は肥満といわれ、糖尿病・高血圧・脂質異常症を併発しやすいことが知られている。炭水化物から中性脂肪への合成・変換は食後に顕著に増加し、逆に空腹時にはOFFとなる。この経路が食事摂取状況に応じてどのように調節されているのかという課題は長らく未解明であったが、最近我々は、この調節機構の主体が、KLF15-LXR/RXR-RIP140転写複合体であるという新たな知見を見い出した。KLF15が絶食時に誘導されると、KLF15とLXR/RXRはSREBP-1遺伝子プロモーター上で複合体を形成すること、この複合体は転写抑制因子RIP140を呼び込むことでSREBP-1遺伝子の転写をOFFにすることが判明した。またその過程で、in vivo Ad-luc解析法とTFEL scan法という独自の核内情報解析手法を確立することができた。
山﨑 正俊
アブストラクト
研究報告書
東京大学大学院工学系研究科
医療福祉工学開発評価研究センター 
心室細動を駆動する渦巻き型旋回興奮波(ローター)制御法の開発 100
心臓突然死の原因である心室細動(VF)の発生・維持機構に及ぼす渦巻き型旋回興奮波(ローター)の役割を解明し、同頻拍に対する遅延ナトリウム電流阻害剤(ラノラジン)の有効性を評価する。VFが繰り返し発生し植え込み型除細動器が頻回作動する重篤なVFストーム家兎モデルを作成4-8週間後に光学マッピング実験を行った(n=16)。心室筋活動電位持続時間(APD)の延長と、APDの空間的不均一性増大(島状)を認めた。島状に延長したAPDの辺縁領域をさまよい運動するローターによってVFが維持されていた。また、APDの空間的不均一性はアドレナリン添加で増大したが、ラノラジン添加でその不均一性は減少した。遅延ナトリウム電流阻害剤による新たなVFストーム治療の可能性を報告した。
湯浅 慎介
アブストラクト
研究報告書
慶應義塾大学医学部
循環器内科
老化関連疾患制御を目指した老化モデルの構築とその応用 100
老化は高等生物における主要な疾患発症基盤であり、老化制御により老化に伴い必発する動脈硬化などを制御することが期待される。老化に関して様々な研究が行われてきたが、能動的にヒト老化をコントロールできる機序は不明である。ヒト老化現象の分子基盤を理解するために、iPS細胞を用いたヒト細胞モデルの作成に着手した。
iPS細胞は、様々な細胞に分化誘導することが可能であり、広い応用範囲がある。一方、単一の分化細胞集団を得ることは困難で、様々な細胞の中に目的の細胞が存在する状態である。iPS細胞を用いたヒト細胞モデルの作成には、iPS細胞由来分化細胞を同定し、解析に用いる必要がある。本研究においては、様々な細胞が存在する中で位相差画像のみで、目的とするiPS細胞由来分化細胞を自動判別する方法を開発した。

平成29年度(第16回)
循環医学分野 若手研究者助成金受領者一覧
<交付件数:10件、助成額:1,000万円>

脳血管障害及びその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
岡部 圭介
アブストラクト
研究報告書
慶應義塾大学医学部
形成外科
海馬ニューロン由来VEGFが誘導する血管網が神経系の発達と維持に果たす役割 100
中枢神経組織は活動に伴い多くの血流を必要とするため、その血管ネットワークの構築・維持は精緻なメカニズムで制御されているが、その中心的役割を果たすのがvascular endothelial growth factor(以下、VEGF)である。今回、海馬および頭頂葉の特定のニューロン由来のVEGFが欠失するコンディショナルノックアウトマウスを用いてニューロン由来VEGFの役割について解析した。同マウスは1か月以内に麻痺を発症して死に至ることが分かった。複数の遺伝子改変マウスを駆使して解析した結果、ニューロン由来のVEGFは、それ自身が神経栄養因子として作用する効果は微々たるものであり、血管内皮に発現するVEGF受容体へ結合し血管ネットワークを誘導することによって神経を栄養し、脳組織が維持されることが判明した。今後、この所見を発展させることにより、脳梗塞治療などへの臨床応用が期待できる。
七田 崇
アブストラクト
研究報告書
東京都医学総合研究所
生体分子先端研究分野
脳卒中ルネサンスプロジェクト
炎症因子の排除による脳梗塞・認知症の新規治療法の開発 100
本邦では脳卒中や認知症患者の増加が懸念されているが、現代医療においても脳卒中や認知症に対する治療法は十分に確立されていない。本研究は、脳梗塞後の炎症を収束させるメカニズムの解明(脳内の炎症因子を排除させるScavenger誘導因子の同定)を行い、これを認知症の予防法に応用することを目的とする。最先端の神経科学、生化学、免疫学による融合研究を実施し、脳卒中の発症早期から神経症状の回復を促進させ、認知症や寝たきりを予防する神経機能改善薬を開発する。

心疾患及びその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
有馬 勇一郎
アブストラクト
研究報告書
熊本大学医学部附属病院
心血管寄附講座 循環器内科学
ケトン体合成能の変化に注目した環境ストレスによる心疾患リスク上昇メカニズムの解明 100
成人病胎児発症起源説の機序を解明するため、妊娠中にカロリー制限を施して作出した低体重マウスを解析した。低出生体重マウスは出生後に血中ケトン体濃度が低下しており、ケトン体合成能が低下していることが明らかになった。続いて、CRISPR/Cas9システムを用いてケトン体合成の律速酵素であるHMGCS2 KOマウスを作成し、新生仔期のHMGCS2 KOマウスにおいて肝臓重量が有意に増加していることを確認し、脂肪沈着が著しく増加していることが確認された。肝臓組織を用いてメタボローム解析を施行すると、KOマウス肝臓では解糖系が抑制されている一方で、アセチルチルCoAは増加しており、脂肪酸異化の亢進が示唆された。また電子顕微鏡による観察を行うとKOマウス肝臓において著しいミトコンドリアの変性所見を認めた。一連の検討より、低体重マウスにおけるケトン体合成不全が、アセチルCoAの蓄積と、ミトコンドリア機能障害に寄与している可能性が示唆された。
楠本 大
アブストラクト
研究報告書
慶應義塾大学医学部
循環器内科/救急科
抗動脈硬化iPS由来血管内皮細胞にて高発現している霊長類特異的遺伝子POTEEが、動脈硬化抑制に果たす役割の検討 100
動脈硬化リスクが非常に大きいにも関わらず動脈硬化進行を全く認めない抗動脈硬化患者から作成したiPS細胞由来血管内皮細胞ではストレス誘導性の細胞老化、炎症が抑制されており、霊長類特異的遺伝子POTEEが高発現していた。POTEEを血管内皮細胞に強制発現させるとNFκBに誘導される細胞老化や炎症を抑制した。結合蛋白を質量分析法にて網羅的に解析すると低分子G蛋白であるRANシグナルと強く相互作用しており、POTEEはRANシグナルを促進しNFκBの核外輸出を促進し、NFκBの不活化を早めていると考えられた。血管内皮細胞特異的にPOTEEを強制発現させると、大腿動脈カフモデルに誘導される内膜肥厚や炎症惹起を抑制した。またAPOE-/-マウスと交配させる動脈硬化プラークを著明に減少させた。POTEEは抗動脈硬化における重要な役割を果たし、動脈硬化の新規治療ターゲットとなりうることが示された。
清水 逸平
アブストラクト
研究報告書
新潟大学大学院医歯学総合研究科
先進老化制御学
心不全における褐色脂肪由来代謝物質の病的意義の解明 100
予備的検討の結果、心不全モデルマウスでは体温が低下し、褐色脂肪不全が生じることがわかっていた。褐色脂肪特異的機能不全マウスを開発し、左室圧負荷時の表現型を解析した。褐色脂肪不全マウスは野生型マウス(WT)と比較して圧負荷に伴う心機能低下と体温低下が増悪した。心不全モデルマウスに褐色脂肪移植を行うと心機能が改善すること、褐色脂肪を支配する交感神経を除神経したマウスに圧負荷モデルを作製すると心機能低下が改善することもわかった。メタボローム解析の結果、不全褐色脂肪に由来すると思われる酸化型コリンが心不全時に血液中で上昇することが明らかとなった。酸化型コリンはミトコンドリア機能不全を惹起し、心臓の代謝不全と線維化を促進することで心不全の病態を増悪させることがメタボローム解析の結果から明らかとなり、現在も詳細なメカニズムの解明に挑んでいる。
高田 真吾
アブストラクト
研究報告書
北海道大学大学院医学研究院
循環病態内科学
心不全におけるミトコンドリア複合体II会合制御による新規治療法の開発 100
【目的】心不全に起因するcomplex IIの会合不全における形態・機能的制御の破綻が、ミトコンドリア呼吸能低下を介して骨格筋異常の発症・進展に関与するという仮説を検証した。
【対象・方法および結果】雄性C57BL/6Jマウスは偽手術(Sham)群もしくは左冠動脈結紮による心筋梗塞後心不全モデル(HF)群の2群に分け、28日間飼育した。HF群の心機能および運動耐容能はSham群に比較し、有意に低下した。HF群の骨格筋ミトコンドリアcomplex II由来呼吸能はSham群に比較し、HF群で有意に低下した。同様に、complex IIの会合レベルおよびSDH会合因子の発現レベルはHF群で有意に低下した。
【結論】本研究の結果は、心不全における骨格筋ミトコンドリア機能障害の根幹としてcomplex IIの会合不全がある可能性を示唆した。
武内 謙憲
アブストラクト
研究報告書
筑波大学
医学医療系 内分泌代謝・糖尿病内科
in vivoイメージングによる糖・脂質代謝に重要なKLF15発現制御機構の解析 100
KLF15は肝臓における糖・脂質代謝を調節しており、絶食時に発現が亢進することは知られているが、その調節機構は未だ解明されていない。本研究では絶食時の肝臓におけるKLF15遺伝子の発現調節機構を、in vivo Ad-luc法という生体でのプロモーター解析手法とマウス転写因子発現プラスミドライブラリーTFELを用いて解明することとした。肝臓で主に高発現しているKLF15遺伝子のvariantであるKLF15-1aのプロモーター配列にルシフェラーゼレポーター遺伝子を繋げたアデノウィルス(Ad-KLF15-1a-luc)を作製後、 絶食時の肝臓においてAd-KLF15-1a-lucの活性が上昇することをin vivo Ad-luc法にて確認した。そして、さらなる検討により絶食時に重要な働きを担うゲノム領域の絞り込みに成功し、その領域の活性を調節する候補転写因子をTFELにていくつか同定した。
武田 行正
アブストラクト
研究報告書
京都府立医科大学大学院医学研究科
細胞再生医学
ケミカル・ダイレクト・リプログラミングによる新規ヒト心筋細胞誘導法の開発 100
本研究は、遺伝子の導入を行わず、細胞の分化・リプログラミングに中心的な役割を果たすシグナル伝達経路を、複数の低分子化合物を組み合わせることによって同時に制御し、ヒト皮膚由来線維芽細胞から臨床応用可能な心筋細胞をダイレクトリプログラミングすることを目的とする。心筋細胞用培地の組成および候補となる化合物の組み合わせを詳細に検討した結果、最終的に5から8種類の化合物の組み合わせによって、線維芽細胞から自発的に収縮する心筋様細胞へ効率よく誘導することに成功した。この心筋様細胞は、心筋前駆細胞や心筋細胞に特異的な遺伝子の発現が上昇しており、また免疫染色によりActininの発現が一部の細胞で確認された。しかし、iPS細胞由来の心筋細胞と比較したところ、細胞の自発的な収縮運動の頻度や速度、また遺伝子の発現量が不十分であり、完全な心筋細胞へ誘導するためには、さらに適切な成熟化の過程が必要であると考えられる。
長洲 一
アブストラクト
研究報告書
川崎医科大学
腎臓・高血圧内科学
糖尿病性腎症における糸球体内皮細胞ー上皮細胞連関の機序解明 100
糖尿病性腎症と血管内皮機能障害の連関機序に着目し研究を続けてきた。目的として①正常状態では糸球体内皮細胞は一酸化窒素(NO)産生を介して上皮細胞内でのインフラマソーム活性化を抑制的に制御することを証明する。②糸球体上皮細胞内のインフラマソーム活性化抑制が糖尿病性腎症の進展を抑制しうることを証明する。結果:In vivo実験1):STZ投与後、4週の蓄尿でWT-STZでは軽微なアルブミン尿のみであったが、eNOSKO-STZでは著明に増加した。糸球体内のインフラマソーム関連遺伝子発現は、eNOS-STZでのみ上昇を認めた。蛍光二重染色(ASCとPodocalyxin)を行ったところ糸球体上皮細胞でインフラマソーム活性化を認めた。In vivo実験2):eNOS-ASC-DKO-STZはeNOSKO-STZに比較し有意にアルブミン尿の減少を認め、上皮細胞障害は改善した。本検討結果から糖尿病性腎症の進展において内皮機能障害は糸球体上皮細胞障害を促進させることがわかった。
松井 弘樹
アブストラクト
研究報告書
群馬大学大学院保健学研究科
生体情報検査科学講座
心臓リモデリングにおける細胞膜脂質の合成機構の意義 100
心臓への血行動態負荷の増加により、心筋細胞肥大や間質線維化といったリモデリング機構が誘導されるが、リモデリングに必要な脂肪酸の供給源や、脂肪酸合成系酵素の関与についてはほとんど明らかにされていない。我々は、心筋細胞特異的FAS欠損マウスにTAC処置したところ、心機能低下は認められるものの、心肥大の程度に差は認められなかったのに対し、Elovl6 cKOマウスにTAC処置したところ、心/体重比や間質線維化、左室壁厚の増加が有意に抑制され、左室収縮能の低下も有意に改善することを見出した。RNAシークエンスの結果から、Elovl6欠損マウスでは肥大や線維化、炎症反応に関わる遺伝子群が、コントロールマウスと比較して有意に低下する一方、細胞の恒常性に関わるタンパクX因子が著明に増加することを見出した。以上より、心筋細胞における脂肪酸組成の変化が、圧負荷誘導時のリモデリングに関与することが示唆された。

平成29年度
循環医学分野 若手研究者継続助成金受領者
<交付件数:1件、助成額:100万円>

心疾患及びその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
片岡 雅晴
アブストラクト
研究報告書
慶應義塾大学医学部
循環器内科
難病疾患肺動脈性肺高血圧症における未解明発症原因遺伝子の新規同定と機能解析 100
肺動脈性肺高血圧症(PAH)のうち、約3/4は原因を特定できない"特発性PAH(IPAH)"と鑑別される。IPAHのうち、BMPR2遺伝子異常は約25%に認めるが、未だBMPR2に次ぐ重要な新規発症関連遺伝子は発見に至っていない。 本研究では、多施設共同体制にて、肺高血圧症バイオバンクを構築し、NGSによる全エキソーム解析をサンプルバンクの多数検体を用いて実施した。 その結果、モヤモヤ病や末梢性肺動脈狭窄(PPS)の発症と関係することが既報告されている特定の遺伝子の変異が、IPAH患者の1割弱にも認めることを新たに発見した。 本研究によって見出された遺伝子変異が存在した場合に、何らかの制御機構がさらに加わることによって、モヤモヤ病, PPS, IPAHを発症するものと考えられる。現在、発症制御に関わる機能の解析実験等を進めている。

平成29年度(第12回)
循環医学分野 海外留学助成金受領者一覧
<交付件数:2件、助成額:1,000円>

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
(留学先)
栗原 理 日本医科大学千葉北総病院
循環器内科
急性冠症候群におけるプラークびらんの予測因子の同定 500
Cardiovascular Research Center at the Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, U.S.A.
齋藤 佑一 千葉大学医学部附属病院
循環器内科
冠動脈疾患における解剖学的・生理学的評価の相互連関と新規デバイス開発に関する検討 500
Yale University School of Medicine, U.S.A.
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