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血液医学分野 「平成31年度」

平成31年度(第38回)
血液医学分野 一般研究助成金受領者一覧
<交付件数:20件、助成額:2,000万円>

血栓止血・血管機能(各種臓器の生理、病態など)とその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
大河原 浩
アブストラクト
研究報告書
福島県立医科大学 血液内科学講座移植関連血栓性微小血管障害症の病態解明:新規治療標的及びバイオマーカーの探索100
同種造血幹細胞移植 (HSCT) は造血器腫瘍や造血障害の唯一の根治治療である。移植関連血栓性微小血管障害症(TA-TMA)はHSCTの予後を左右する合併症であるが、有効な治療法は未だ不確立である。本研究は急性移植片対宿主病(GVHD/TA-TMAの病態機序におけるGas6-Merシグナルの役割を明らかにし、GVHD/TA-TMAの予測マーカーとして血清Gas6が有用であるか否かを検証する。さらに、GVHD/TA-TMAの治療戦略候補としての選択的Mer受容体阻害剤の有用性を検証する。同種マウスモデル及び内皮細胞を用いた実験で、Gas6-MerシグナルがGVHD及びTA-TMAの病態に重要な役割を演じている可能性を見出した。本研究はGVHD/TA-TMA病態の一端を解明し、Gas6-MerシグナルがGVHD/TA-TMA に対する新規治療やバイオマーカー候補となり、創薬や新規検査法の開発に貢献できる可能性を秘めていることを示した。
岡本 貴行
アブストラクト
研究報告書
島根大学医学部 薬理学講座血管硬化による血管内皮細胞の機能変化とその分子機構100
細胞は細胞外環境の硬さなど物理的性質を感知して細胞内シグナルに変換し, 自身の機能を調節する. 本研究では血管内皮細胞が細胞外基質(血管組織)の硬さ変化に応じて生じる細胞内シグナル, および炎症や血液凝固など細胞機能の変化について検討した. 正常な血管と同等の硬さを有した軟らかいゲル上で培養した血管内皮細胞は, 硬いゲル上で培養した細胞と比較してYAPの活性化抑制とDll4の発現亢進を示し, Notchシグナルを誘導することを見出した. Notchシグナルの活性化は, IL-6などの炎症関連遺伝子の発現を抑制した. これらの結果から, 硬化血管の血管内皮細胞は向炎症状態である可能性を示した. 一連の研究は, 生化学的な刺激に加え, 力学的な刺激が血管内皮細胞の機能を調節することを示し, その制御により血管内皮細胞の機能が改善できる可能性を示唆している.
久志本 成樹
アブストラクト
研究報告書
東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 救急医学分野外傷患者におけるヘパリン起因性血小板減少症と発症メカニズム探索のための包括的研究100
外傷患者はHIT発症ハイリスクであるが、適切な研究は行われていない。外傷患者における①HIT抗体陽転化と背景因子の把握、②発症メカニズム探索を目的とした。方法:48時間以上の入院加療を要するInjury Severity Score>10かつ18歳以上の外傷患者を対象とした多施設共同前向き観察研究である。結果:重症外傷184例におけるHIT抗体陽転化率は、ELISA法 26.6%、機能的測定法 16.3%であった。外傷重症度に伴いその頻度が上昇し、ヘパリン曝露状況によっても異なり、他の病態より早期に抗体陰転化が生じる。結論:重症外傷患者におけるHIT抗体陽転化率は、ELISA法 25%、機能的測定法 16%を超えるものであり、高頻度である。また、外傷重症度上昇に伴いその頻度が上昇し、ヘパリンへの曝露状況によっても異なること、早期に抗体陰転化が生じる。重症外傷患者における血小板減少、血栓症、ヘパリンの使用に関して、新たな視点からの注意を要する。
舘野 馨
アブストラクト
研究報告書
国際医療福祉大学 医学部・成田病院 循環器内科新規心血管リスクとしての進行性軽度血小板減少症;血小板のHeterogeneityに関する探索的研究100
血液透析患者に軽度だが進行性の血小板減少症がみられることがある。我々はこの現象が、心血管イベントの発症を予測することを発見し、その背景に血小板の活性化と消費、および造血幹細胞の老化が存在する可能性を見出した。本研究は心血管イベントの発症を予測するバイオマーカーや、新たな治療標的の発掘を通して、透析患者の予後を改善するものと期待される。その発展は、さらに動脈硬化性疾患の機序解明にも資する可能性が高い。また、もし血小板の質的変化が本当に心血管イベントをもたらすのであれば、血小板輸血ドナー選定に重大な警鐘を鳴らす、貴重なコンセプトを提供することにもなる。
錦井 秀和
アブストラクト
研究報告書
筑波大学医学医療系 血液内科造血器疾患における造血ニッチ解析100
近年、様々な非造血系造血支持細胞から構成される造血ニッチ細胞の変化が造血器疾患の発生母地になっている事を示され、ヒト造血器疾患におけるニッチ細胞の役割が注目されている。本研究では、特に造血環境異常が著しい骨髄異型性症候群/骨髄増殖性疾患(MDS/MPN)または骨髄線維症患者を対象に造血環境の3次元構造を明らかにしヒト造血器悪性腫瘍の発生母地としての骨髄ニッチ細胞の役割を明らかにすることを目的とし、TSA法による多重染色とスペクトラムアナライザーを用いた画像解析により、複数の非造血細胞の局在を3次元的に解析する手法を構築した。実験結果からヒト骨髄にはマウスと共通する造血支持組織が存在する一方ヒト特有の間葉系細胞の存在が示唆され、特に骨髄線維化の強いMDS骨髄では、異常シュワン細胞の増殖が確認され、正常造血障害の原因となっている可能性が示唆された。現在その詳細を解析中である。

輸血・細胞療法とその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
縣 保年滋賀医科大学 生化学・分子生物学講座 分子生理化学部門iPS細胞から再生したT細胞の活性化シグナルを強化するがん免疫療法の開発100
指田 吾郎
アブストラクト
研究報告書
熊本大学国際先端医学研究機構 白血病転写制御研究室BCR-ABLキナーゼとエピゲノム制御破綻による白血病発症機構の解明と治療標的検証100
慢性骨髄性白血病(CML)はフィラデルフィア染色体転座によって再構成されたがんキメラ遺伝子BCR-ABLチロシンキナーゼの恒常的なシグナル伝達によって病態が形成されるがんである。TIF1b/KAP1/TRIM28は、HP1結合蛋白質であり、ヒストンH3K9メチル化酵素ESET誘導を介したヘテロクロマチン形成やユークロマチン領域における転写制御機能が知られる。CML細胞では、BCR-ABLによって直接TIF1bのチロシン残基がリン酸化され、H3K9me3修飾とHP1結合が減弱することで、標的遺伝子の発現レベルが上昇する。一方、TIF1b-3YFリン酸化欠失変異体はHP1結合を維持してがん遺伝子の転写を抑制することを、申請者は見出した。こうした知見に基づき、白血病特異的なTIF1b複合体によるエピゲノム制御機構を解析するとともに、新規治療標的として検証した。

血液・血管に関連する再生医学

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
内藤 尚道
アブストラクト
研究報告書
大阪大学微生物病研究所 情報伝達分野血管内皮幹細胞による血管再生療法の開発100
これまで均一であるとされてきた血管内皮細胞は多様性を示すことが明らかになっている。私たちは増殖能の高い幹細胞様の性質を示す内皮幹細胞を同定し解析してきた。本研究ではこの特殊な内皮細胞の1細胞レベルでの遺伝子発現解析を通じて、内皮幹細胞の遺伝子発現特性を明らかにして、虚血時血管新生における内皮幹細胞の活性化機能の解明を行った。得られた遺伝子発現情報を基に、ES/iPS細胞から内皮幹細胞を誘導する方法の開発に取り組んだ。内皮幹細胞を誘導して機能的な血管を再生することができれば、将来、血管再生医療や臓器再生医療に応用できる可能性が期待できる。
横溝 智雅
アブストラクト
研究報告書
熊本大学国際先端医学研究機構新規レポーター系を利用した造血幹細胞の試験管内誘導法の開発100
近年、iPS細胞を利用した疾患治療・再生医療への試みが盛んにおこなわれている。iPS細胞から血液を作製する研究も数多くおこなわれており、多種の血液細胞の誘導が可能となっている。一方で、造血幹細胞の試験管内誘導については、いまだ成功の報告はない。その主たる理由として、造血幹細胞の発生をリアルタイムで可視化できるレポーター系が開発されていない点が指摘されている。本研究では、最近我々が開発した新規レポーターマウス(Hlf-tdTomato)を利用して、胎生期における造血幹細胞の発生・成熟過程の試験管内再構成を試みた。

感染・免疫・アレルギーとその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
安藝 大輔
アブストラクト
研究報告書
慶應義塾大学 微生物学免疫学教室メモリーCD4 T細胞の免疫老化制御機構の解明100
加齢に伴う個体レベルでの免疫系の機能的変化、いわゆる「免疫老化」は病原菌に対する易感染、自己免疫疾患や発がんなどと密接に関わっている。免疫老化は、加齢に伴い増加するメモリーCD4 T細胞(老化関連CD4 T細胞:Tsen)による獲得免疫の異常が一因であると考えられているが、Tsenの発生機序はほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、Tsenを介した免疫老化の制御メカニズムの解明を目指した。発現ライブラリーを導入したCD4 T 細胞を用い、in vitro及びin vivoにおけるTsenの発生に関わる因子の探索を実施した。その結果、Tsenの発生を促進する分子として転写因子Nr4aファミリーを同定した。今後、本研究をさらに発展させ、Nr4aによる新規免疫老化制御機構の詳細を明らかにすることで、高齢者における獲得免疫能の改善のための予防、治療法の開発に貢献することを目指す。
伊勢 渉
アブストラクト
研究報告書
大阪大学免疫学フロンティア研究センター 分化制御研究室ANCA関連血管炎モデルにおけるpathogenic抗体レパトアの同定とregulatory抗体の開発100
本研究はANCA関連血管炎の標的抗原であるmyeloperoxidase(MPO)特異的抗体レパトアからpathogenic抗体レパトアを同定することを目的として行われた。まずMPOをマウスに免疫した後、MPO特異的抗体を産生するモノクローナル抗体を複数樹立した。樹立した抗体をマウスに投与することで糸球体腎炎を誘導できたことから、モノクローナル抗体のpathogenicityが確認できた。さらにこれらpathogenic抗体をregulatory抗体に変換する目的で、シアル酸の導入を試みた。抗体産生B細胞ハイブリドーマにST6Gal1およびST6Gal2遺伝子を導入し、シアル酸付加モノクローナル抗体を得た。今後これをマウスに投与し、糸球体腎炎誘導能や抑制能を検討する予定である。
籠谷 勇紀
アブストラクト
研究報告書
愛知県がんセンター 研究所 腫瘍免疫応答研究分野STAT3シグナル活性化によるがんに対する養子免疫療法の治療効果改善100
本研究では、がん抗原特異的なT細胞を体外で製造して輸注する養子免疫療法の治療効果改善を目的として、T細胞の生存・増殖に重要なサイトカインシグナルに着目して抗腫瘍T細胞を遺伝子レベルで改変することで、その機能を高めるための研究を進めた。サイトカインシグナルで活性化されるSTAT3の恒常的活性化型変異体をキメラ抗原受容体 (CAR)導入T細胞に発現させると、広範な遺伝子発現プロファイルの変化に伴い、一過性の増殖能やメモリー形成能、細胞傷害活性が亢進した一方、長期的には細胞死が促進された。STAT3の活性化に加えてMAPKの恒常的活性化シグナルを組み込むことでSTAT3による機能変化を維持しつつ、細胞死誘導は回避された。本研究成果をもとに遺伝子改変CAR-T細胞の抗腫瘍効果の評価を今後さらに進める計画である。
神谷 亘
アブストラクト
研究報告書
群馬大学大学院 医学系研究科コロナウイルスと免疫細胞のクロストーク100
コロナウイルスには、重篤な肺炎を引き起こす重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスや中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス、そして風邪の原因ウイルスの一つである229Eコロナウイルスが存在する。これらのウイルスは呼吸器に感染する、そして、その感染病態を左右する因子として異常な免疫反応が考えられている。  そこで、この異常な免疫反応の原因を解き明かすために、これらのウイルスの免疫細胞、とくにマクロファージにおける、感染動態を明らかにすることを目的としてコロナウイルスの組換えウイルスの作出を行った。特に現在問題となっている新型肺炎の原因ウイルスであるSARSコロナウイルス-2の組換えウイルスの作出とGFPレポーター組換えウイルスの作出を行った。この組換えウイルスはコロナウイルスと免疫細胞の相互作用を解明するのに有用である。
木村 彰宏
アブストラクト
研究報告書
国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター 免疫病理部門AhRリガンドを用いたB細胞特異的DDSの開発100
制御性B細胞(Breg)は強い免疫抑制作用を有しており、ダイオキシン受容体(AhR)がその分化に関与していることが確認されている。AhRは免疫応答をはじめとするさまざまな生体反応に関与していることが報告されてきたが、そのAhRの多岐にわたる機能がAhRをターゲットとした治療法の開発の障害となってきた。本研究ではその障害を取り除くために、「AhRリガンドのB細胞特異的な薬物送達システムの開発および多発性硬化症に対する治療応用」の研究を進めた。本申請者らはB細胞特異的にAhRリガンドを送達できるリポソームの開発に成功したことから、B細胞特異的AhRリガンド内包型リポソームはAhRを標的とした治療における問題点を解決し画期的な治療法になる可能性を秘めていると思われる。また一方で、Breg分化においてAhRがArntと協調的に作用していることを明らかにし、Breg分化メカニズムを解明した。
齋藤 史路
アブストラクト
研究報告書
金沢医科大学医学部 免疫学講座新しい血液細胞分化モデルを決定づける新規分子の同定と急性骨髄性白血病の治療法開発100
近年の研究により、造血幹細胞から各前駆細胞を経由して成熟細胞へと分化する過程を説明した現在のモデルが正しくない可能性が示唆され、正しいモデルを提唱する必要性がある。我々はヒト単球前駆細胞を同定する過程で、血液細胞分化経路における最初の分岐点を決定する新規分子マーカーXを同定した。この分子Xは多能性前駆細胞から発現し始め、同前駆細胞が陽性と陰性に分かれることが明らかとなり、それぞれの分化能を検討するとX+多能性前駆細胞は骨髄球系細胞とリンパ球系細胞には分化したが、赤血球系細胞には全く分化しなかった。またX+多能性前駆細胞をマウスに移植し、in vivoにおける各系列細胞への分化能を検討したところ、in vitroと同様の結果が得られた。本研究結果によって多能性前駆細胞が血液細胞の主な分化起源であること、さらにX分子によって最初の分岐点が決定される正しい血液細胞分化経路が明らかになった。
齊藤 泰之
アブストラクト
研究報告書
神戸大学大学院医学研究科 シグナル統合学分野血球細胞寿命を制御する新たな分子基盤の解明100
 本研究では、マクロファージや樹状細胞(DC)などの貪食細胞に高発現するSIRPαとそのリガンドCD47による細胞間シグナル(CD47-SIRPα系)による末梢組織での血液細胞の寿命制御について、独自に作製した遺伝子改変マウスを用いて詳細な解析を行う。本研究成果により、貪食細胞の機能制御による血液細胞の寿命制御の新たな分子基盤として研究の発展性が期待されるだけでなく、造血器腫瘍に対する新規免疫療法の開発につながることが期待される。
堀 昌平
アブストラクト
研究報告書
東京大学大学院薬学系研究科 免疫・微生物学教室常在細菌叢と制御性T細胞による組織選択的アレルギー性炎症制御機構の解明100
アレルギー疾患を促進する重要な環境要因として常在細菌叢の構成異常が知られており、そのメカニズムとして免疫抑制機能を持つ制御性T細胞(Treg)の誘導障害が提唱されている。アレルギー性炎症の抑制にTregと常在細菌がどのように寄与するのかを明らかにするために、我々はヒトIPEX症候群患者で同定されているFoxp3<A384T>変異が肺や大腸など粘膜組織へのTregの集積を組織選択的に障害して慢性アレルギー性炎症を惹起することに着目した。Foxp3<A384T>マウスを無菌化し、アレルギー性炎症に常在細菌が寄与するか否かを検証した。その結果、Foxp3<A384T>変異による肺と大腸のTh2細胞の集積に常在細菌は寄与しないが大腸における好酸球数増加は常在細菌依存的であることがわかった。Tregの機能破綻により大腸では何らかの常在微生物がTh2細胞非依存的に好酸球の集積を促進すると考えられた。
増田 貴夫東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 免疫治療学分野次世代型インテグラーゼ阻害剤開発に向けた分子基盤の確立100
松本 佳則
アブストラクト
研究報告書
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学自己免疫疾患の新たな発症機序解明と治療法開発100
炎症性サイトカインの産生とそれに伴う関節破壊を特徴とする自己免疫疾患の関節リウマチは、未だ治癒困難であり、原因も未解明である。骨量は骨形成を担う骨芽細胞と、骨吸収を担う破骨細胞のバランスにより維持されているが、破骨細胞優位になるリウマチ病態における骨代謝の制御メカニズムも明らかになっていない。受容体と細胞内シグナルを仲介するアダプタータンパク3BP2は骨芽細胞や破骨細胞の分化、機能に必須の因子であることが報告され、3BP2の機能に関連した“因子A”は骨代謝制御経路で機能することが報告されている。そこで我々は因子Aがリウマチ病態において破骨細胞の分化、機能を制御し、骨代謝をコントロールしているのではないかと考えたが、その生体内での機能は不明で、遺伝学的な検討もなされていない。本研究では因子Aノックアウトマウスの解析を通じて、関節リウマチの病態形成における因子Aの遺伝学的意義を明らかにする。
渡邉 智裕
アブストラクト
研究報告書
近畿大学医学部 消化器内科腸管ー膵臓免疫ネットワークからみたIgG4関連疾患の発症機序の解明100
IgG4関連疾患は血清IgG4値の上昇・IgG4陽性細胞の罹患臓器への浸潤・多臓器障害を特色とする新規疾患概念である。従来、自己免疫性膵炎・唾液腺炎などと診断されていた症例の大半がIgG4関連疾患の臓器特異的表現型であることが判明した。しかしながら、IgG4関連疾患の病態生理は不明である。最近、我々は腸内細菌を認識して活性化される形質細胞様樹状細胞 (pDCs)が自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患を誘導することを見出した。今回の研究において、我々は腸管-膵臓免疫ネットワークの解明を介して、自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患の病態解明を目指した。その結果、腸管バリアの破綻は腸内細菌の膵臓への移行とpDCsの活性化を介し、自己免疫性膵炎を悪化させるが、唾液腺炎は悪化させないことを見出した。つまり、自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患の多臓器病変が同じメカニズムではなく、臓器ごとに異なるメカニズムで生じる可能性が示唆された。

平成31年度(第21回)
血液医学分野 若手研究者助成金受領者一覧
<交付件数:10件、助成額:1,000万円>

血栓止血・血管機能(各種臓器の生理、病態など)とその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
芥田 敬吾
アブストラクト
研究報告書
大阪大学医学部附属病院 輸血部血小板インテグリン活性化制御機構の解析と新規抗血小板療法の開発100
血小板表面には複数の膜糖蛋白が発現しており、中でもインテグリンαIIbβ3 (GPIIb/IIIa)は血小板機能の中心を担っている。近年、先天性巨大血小板性血小板減少症の患者でαIIbβ3の遺伝子変異が複数報告されており、我々は本邦の症例、4家系11名でαIIb(R995W)変異を見出している。本変異は血小板においてαIIbβ3の恒常的活性化が見られることが特徴であり、恒常的αIIbβ3活性化がもたらす病態、特に血小板産生、血小板機能に及ぼす影響についてヒトαIIb(R995W)変異に相当するαIIb(R990W)ノックイン(KI)マウスを作製し検討した。KI マウスは巨大血小板性血小板減少症を呈し、proplatelet形成の障害を主因とした血小板産生障害が血小板減少の主因であることが示唆された。KIマウス血小板のαIIbβ3発現はヘテロマウスでWTの75%程度、ホモマウスではWTの3%程度と著明に減少しており、ホモマウスでは血小板凝集が著明に障害されていた。
寺島 明日香
アブストラクト
研究報告書
東京大学大学院医学系研究科 骨免疫学寄付講座血友病性関節症発症メカニズムの解明100
血友病は治療法の発展により予後は格段に改善したが、血友病性関節症に関しては関節置換術を行うしかない。出血しやすい血友病患者の外科手術は困難を極めるため、予防を第一に考えるべきであるにも関わらず血友病性関節症を抑制する有効な方法は未だに報告がなく、他の関節症と比べ未開拓なままである。そこで血友病関節症特異的な関節破壊メカニズムを解明し、新たな治療法開発の分子基盤を築くことを目指した。血友病Aモデルマウスの膝関節腔を針で穿刺し、出血を引き起こすと、4週後には骨破壊が観察された。TRAP陽性細胞は穿刺後1週間という早期に検出され、関節内にはミエロイド系細胞が集積した。遺伝子発現解析から、破骨細胞分化に必須であるRANKLの発現上昇、IL-1βやIL-6の発現上昇も起きていた。一方でTNFやIL-17は低いレベルで推移していた。こうした変化は血友病性関節症特異的であると考えられ、新規の治療ターゲットとなる可能性が高い。
平本 貴史
アブストラクト
研究報告書
自治医科大学 生化学講座 病態生化学部門切らないゲノム編集による血友病Bに対する新規治療法の開発100
近年、「ゲノム切断を伴わないゲノム編集」として塩基編集が注目されている。我々はPAM配列が「G」のみのSpCas9-NGを用いて、血友病B患者由来人工多能性幹細胞(iPSC)の疾患原因遺伝子の修復を行なった。重症血友病B患者由来iPS細胞であるH002細胞を用いた切断効率の検討により、SpCas9-NGでは、変異近傍のPAM標的範囲が拡張していることを確認した。次にSpCas9-NGを用いた塩基編集プラスミドを用いて、H002細胞の疾患原因遺伝子の修復効率を解析した。疾患遺伝子が修復できたH002Cl29細胞を単離し、肝細胞へ分化誘導を行ったところ、肝細胞特異的遺伝子発現が確認でき、免疫不全マウスに移植することによりF9遺伝子発現が確認できた。塩基編集とPAM配列自由度が高いCas9を組み合わせは、血友病Bのみならず多くの点変異に起因する遺伝病に対する有効な治療法となりうる。

血液・血管に関連する再生医学

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
井上 大地
アブストラクト
研究報告書
神戸医療産業都市推進機構 先端医療研究センター 血液・腫瘍研究部造血幹細胞の機能回復を目的としたエキソソーム創薬100
加齢性造血を背景とする骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞の遺伝子変異、造血不全を特徴とするが、MDS幹細胞がどのように残存する正常造血を抑制するのかは解明されていない。本研究では、MDS幹細胞由来のエキソソームを鍵として、代表的なニッチ細胞である間葉系幹細胞を介した新しい調節メカニズムを解き明かすことに成功した。すなわち、MDS幹細胞由来のエキソソームが間葉系幹細胞に取り込まれると、正常造血幹細胞へのサポート能を有する骨芽細胞系列への分化が障害され、骨量が低下し、MDS幹細胞が相対的に増加することを見出した。さらに、骨芽細胞系列への分化を制御するエキソソーム内の特定のmicro RNA群を治療標的として同定した。これらは、根治的治療法が存在しないMDS患者において、造血・骨を中心とする多細胞系ネットークを対象としたエキソソーム創薬の基盤となる成果と言える。
細川 晃平
アブストラクト
研究報告書
金沢大学附属病院 高密度無菌治療部HLAクラスIアレルにより提示される再生不良性貧血自己抗原の同定100
特発性再生不良性貧血(acquired aplastic anemia, AA)はT細胞の異常によって起こる一種の自己免疫疾患である。本研究はAA患者iPS細胞由来造血前駆細胞(HSPC)を用いてCTLを誘導し、その標的抗原を同定することを目的とする。HLAクラスⅠアレル欠失陽性AA患者のCD8+ T細胞から、野生型HSPCは傷害するが、B4002欠失HSPCは傷害しないCTLクローンを単離することに成功した。これらの中で高頻度に検出されたTCRのうちの一つは、同一症例の発症時の骨髄PD-1+CD8+ T細胞からも検出された。CTLのうち、高頻度に認められた2種類のTCRを導入したTCRトランスフェクタントはHLA-B4002拘束性にHLA-B4002導入K562細胞または野生型のiPS細胞由来HSPCを傷害した。今回同定されたTCRトランスフェクタントは、HLA-B4002によって提示される自己抗原を認識している可能性が高い。

感染・免疫・アレルギーとその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
伊藤 美菜子
アブストラクト
研究報告書
九州大学 生体防御医学研究所 アレルギー防御学分野中枢神経系炎症における制御性T細胞による組織修復機構の解明100
多発性硬化症や抗NMDA受容体抗体脳炎などの自己免疫疾患はもちろんのこと、神経変性疾患、精神疾患においても慢性炎症の関連が示唆されている。神経炎症においてはこれまでは自然免役細胞が主な研究対象であったが、広く脳内炎症慢性期には獲得免役が発動し、脳内細胞を制御している可能性が示唆される。本研究では脳内炎症における組織修復課程への制御性T細胞の意義およびメカニズムを解明することを目的とした。一般的なマウス中大脳動脈閉塞モデルを用いて、脳梗塞後の脳内の細胞ポピュレーションを明らかにするために、脳梗塞後の急性期・慢性期の脳半球から5千個ずつの細胞を単離し、一細胞RNAseqとCD4T細胞の1細胞TCRseqを実施した。脳内の免疫細胞と脳細胞の集団は、脳梗塞後に劇的に変化することが分かった。自然免疫細胞が組織修復性に変化したり、獲得免疫細胞が抗原特異的に浸潤・増殖することが分かった。
遠藤 裕介
アブストラクト
研究報告書
かずさDNA研究所 先端研究開発部 オミックス医科学研究室IL-33-IL-31シグナル軸によるアトピー性皮膚炎をおこす病原性T細胞の同定100
アトピー性皮膚炎は本邦では数百万人にも及ぶと考えられている。特に44歳以下の活動期での患者割合が80%を占め、QOLを慢性的に損ねる深刻な問題となっている。本研究では、申請者がこれまで培ってきた病原性T細胞研究の経験を活かし、皮膚において病態を引き起こす細胞集団について、IL-31レポーターマウスを用いて同定することを目指し、研究を推進した。我々が樹立したIL-31-iRFP670マウスを用いて、アトピー性皮膚炎マウスにおけるIL-31産生T細胞を同定することに成功した。サイトカインプロファイルについて解析を進めたところ、IL-31産生T細胞はIL-4やIL-13を共産生するだけでなく、好塩基球の活性化およびアトピー性皮膚炎病態とも関連の深いIL-3を強く産生することが明らかとなった。
河部 剛史
アブストラクト
研究報告書
東北大学大学院医学系研究科 病理病態学講座 免疫学分野新規のT細胞「MP細胞」による感染防御および自己免疫疾患発症機構の解明100
CD4 T細胞は獲得免疫における司令塔としての役割を果たすリンパ球であるが、申請者はこの細胞中に、自己抗原特異性を有し自然免疫機能を保有する新規「MP細胞」を同定した。本研究ではこれに基き、MP細胞の分化機構や感染防御機能、さらには自己免疫疾患惹起能を解明することを目的とした。研究の結果、定常状態下においてMP細胞はTh1様の遺伝子発現プロファイルを有するMP1分画を多く有し、同分画の分化はIL-12によって恒常的に促進されることが明らかになった。また、MP1分画は上述のMP細胞の自然免疫機能の主体であることが証明された。さらに、自己特異的MP細胞は全身性炎症を惹起する潜在性を有することも確認された。今後、MP細胞による全身性炎症惹起メカニズムを分子レベルで解明することにより、これまで難病とされてきた自己免疫疾患に対する新規かつ根治的治療法の確立につながるものと期待される。
河野 通仁
アブストラクト
研究報告書
北海道大学大学院医学系研究院 免疫・代謝内科学教室細胞内代謝を標的とした強皮症の新規治療開発100
全身性強皮症(SSc)は全身の臓器の線維化を特徴とする自己免疫性疾患のひとつである。Bone Morphogenetic Protein (BMP)はtransforming growth factor-β (TGF-β)スーパーファミリーに属し、近年T細胞にも発現していることが報告された。本研究の目的はSSc患者のIL-17産生CD4陽性細胞(Th17)、制御性T細胞(Treg)におけるBMPシグナルの異常を明らかにし、SScの新規治療を開発することである。まずマウスの脾臓からnaïve CD4陽性細胞を分離し、T細胞サブセットへと分化させ、BMP受容体(Bmpr)の遺伝子発現量をみたところ、Bmpr1aがTh17で、Bmpr2はTregで亢進していた。次に健常者ならびに強皮症患者のT細胞サブセットをフローサイトメトリーでみたところTh17は強皮症で割合が増えており、BMPR1aの発現は減少していた。強皮症のTh17分化促進の原因にBMPR1aが関与している可能性があり、治療ターゲットとなりうる。
住田 隼一
アブストラクト
研究報告書
東京大学大学院医学系研究科 皮膚科皮膚免疫関連疾患に関わる新規脂質代謝関連分子の探索100
ヒト皮膚免疫関連疾患に関わる新たな脂質代謝関連分子を探索し、機能解析・機序解明を目指すこととした。まず、各種皮膚疾患における皮膚臨床検体を用いて、脂質関連酵素の発現を網羅的に解析したところ、疾患特異的に上昇/低下する脂質代謝関連遺伝子をリストアップすることができ、その中には、各疾患の既存のマーカーと相関性を示すものもあることがわかった。現在、遺伝子欠損マウスなどを用いて詳細な役割・機序について検討を行っている。

平成31年度
血液医学分野 若手研究者継続助成金受領者
<交付件数:1件、助成額:100万円>

感染・免疫・アレルギーとその関連領域

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
西出 真之
アブストラクト
研究報告書
大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学ANCA関連血管炎における好中球免疫チェックポイント分子の機能解析とその治療応用 100
本研究は、ANCA関連血管炎(AAV)におけるセマフォリンの病態学的関与を明らかにし、新たな治療法、診断法の開発に繋げることを目的とした。
AAVの病型のうち、高度な腎炎を呈するMPAと、好酸球性副鼻腔炎を合併するEGPAを研究対象とし、血管炎モデルマウスの立ち上げを行った。MPAモデルは、MPO蛋白を免疫したドナーマウスからAnti-MPO抗体を表出しているB細胞をソーティングし、MPO高反応性のモノクロ抗体を複数種類取得、投与する事で腎血管炎を引き起こす手法を開発し、成功した。
前年度より進捗を報告していた好酸球性副鼻腔炎モデルについては、立ち上げ~抗セマフォリン抗体を用いた治療実験までを完了し、抗セマフォリン抗体が好酸球性血管炎症の軽減、鼻腔洗浄液内炎症性サイトカインの低下をもたらし、病態を軽減させることを結論づけ、論文報告を完了した。
セマフォリンを標的とする治療がAAVの各病型に幅広く有用である可能性がある。

平成31年度 (第37回)
血液医学分野 海外留学助成金受領者一覧
<交付件数:2件、助成額:1,000万円>

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
(留学先)
加藤 博史国立感染症研究所 ウィルス第一部 第三室中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスに対する革新的治療薬及びワクチン開発のための基盤研究500
University of Texas Medical Branch at Galveston, U.S.A.
河野 友裕淀川キリスト教病院 脳血管神経内科癌関連動脈血栓症の病態解明と新規治療法の確立500
University of North Carolina at Chapel Hill, U.S.A.
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