| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 上山 健彦 アブストラクト 研究報告書 | 神戸大学 バイオシグナル機能制御研究部門 分子薬理研究分野 | 常染色体優性感音難聴1型(DFNA1)における難聴と血小板減少症の発症時期と病態の相関性解明及びその臨床応用 | 100 |
| 【背景】DFNA1は非症候群性の進行性感音難聴とされて来たが、巨大血小板減少症を合併する。しかし両者の発症時期は不明である。我々は、独自作製DFNA1疾患モデルマウス及びヒト患者における2つの病態の発症タイミングを調べた。 【方法】マウスにおいて、難聴は2から6ヶ月齢まで聴性脳幹反応(ABR)を用いて、巨大血小板減少症は6及び12ヶ月齢での採血で評価した。更に8人のDFNA1患者(p.R1213X)について、難聴と巨大血小板減少症の経過を探った。 【結果】モデルマウスは、3ヶ月齢以降に有意なABR閾値上昇を認めた。一方、血小板数は6ヶ月齢で有意差を認めず 、12ヶ月齢で有意差に減少した。ヒトでは3症例で巨大血小板減少症に先行して難聴の発症を認めた。 【結語】マウスとヒトいずれでも血小板減少症に先行し難聴が発症した。血小板数は難聴の発症予測因子にはならないが、難聴の進行を評価する指標とは成り得る。 | |||
| 松村 貴由 アブストラクト 研究報告書 | 自治医科大学 分子病態治療研究センター | 血液細胞の老化が心血管疾患を促進する機序の解明 | 100 |
| 本研究は、骨髄細胞の老化が心血管疾患の発症・増悪に及ぼす機序の解明を目的とした。背景として、健常高齢者の約10%にクローン性造血(CHIP)という現象が認められ、心血管疾患のリスクを上昇させることが知られている。通常飼育のマウスでCHIPを再現することは困難なため、外的負荷で骨髄微小環境を改変し老化促進モデルを構築することを目指した。喫煙負荷にて骨髄細胞各系統の変化と造血幹細胞の遺伝子発現変化を確認したが、老化促進モデルとしては改良の余地があり、今後の条件最適化が課題となった。並行して、心臓老化の最終形としての心臓アミロイドーシスに着目してヒト心筋生検の網羅的遺伝子解析を行い、予備検討の段階ながら心アミロイドーシスに特異的な候補遺伝子の検出に成功した。一部はマクロファージの老化による機能低下と関連していると考えている。今後も解析を続け、治療標的の同定を目指したい。 | |||
| 森下 英理子 アブストラクト 研究報告書 | 金沢大学医薬保健研究域保健学系 病態検査学 | リン脂質膜上における血液凝固因子の複合体形成過程の動的解析 | 100 |
| 本研究では、高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)を用いてプロトロンビン(PT)のリン脂質(PL)膜への結合過程を1分子レベルで可視化し、PT Nijmegen(p.Glu50Lys)およびPT Shanghai(p.Glu72Gly)の病態を解析した。リコンビナントPTを作製し、凝固一段法および再構成系プロトロンビナーゼ活性試験により活性を評価したところ、両変異型は野生型に比べ著しく低下していた。HS-AFM観察では、変異型のPL結合数および結合時間が有意に減少し、PIVKAと同程度に解離しやすい傾向を示した。これらの結果は、Glaドメイン変異による構造不安定化がPL結合能低下と機能障害を引き起こすことを示唆する。異常PT分子の結合動態を世界で初めて直接可視化し、重篤な出血傾向の分子基盤を明らかにした。 | |||
| 安田 大恭 アブストラクト 研究報告書 | 秋田大学大学院医学系研究科 病態制御医学専攻 生体防御学講座 | 生理活性リゾリン脂質によるリンパ管の弁形成機構とリンパ管関連病態の解明 | 100 |
| リンパ管の形成異常はリンパ浮腫や癌の転移、および発毛異常に関わることが知られており、このような病態に対して創薬開発の基盤となる新しいリンパ管形成分子機構の解明が求められている。リゾホスファチジン酸 (LPA) は生体内において様々な機能を有する生理活性脂質である。本研究の目的は、LPAとその受容体がリンパ管形成に果たす役割とその分子機構を明らかにすることであり、遺伝子欠損マウスやリンパ管内皮細胞を用いて解析を進めた。 解析の結果、LPA4/LPA6がGα12/Gα13-ROCK活性化下流でIκBキナーゼ (IKK)-NF-κBの活性化を介してFOXC2の発現を促し、リンパ管の弁形成と維持および胎生期の浮腫や出血の防止に寄与することを明らかにした。生理活性脂質とそのGタンパク質共役型受容体が浮腫の病態に関わること、およびNF-κBシグナルがリンパ管弁形成に必須であることを初めて見出した成果である。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 淺田 騰 アブストラクト 研究報告書 | 岡山大学病院 血液腫瘍内科 | 神経メディエーター受容体シグナル刺激による微小環境制御を介した新規白血病治療法の開発 | 100 |
| 白血病は難治性血液悪性腫瘍であり、白血病細胞を支持する骨髄微小環境(白血病ニッチ)の制御が新規治療標的として注目されている。本研究では、アドレナリン受容体α2Aアゴニストであるclonidine(CLD)の白血病抑制作用とその分子機序を検討した。MLL-AF9白血病モデルマウスにCLDを投与したところ、生存期間の有意な延長、白血病細胞数の減少、ならびに正常造血の回復が認められた。一方、in vitroでは白血病細胞への直接的な増殖抑制作用は認められず、ニッチを介した間接的作用が示唆された。骨髄ニッチ細胞の解析により、CLD投与によりNotchシグナル関連遺伝子の発現が低下しており、ニッチ由来Notchシグナル抑制を介した白血病幹細胞制御機構が明らかとなった。本研究は、α2Aアゴニストを用いた白血病ニッチ標的治療の新たな可能性を示すものである。 | |||
| 石山 賢一 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学医学部附属病院 血液内科 | 急性リンパ性白血病に対するNK細胞分子の制御に基づく細胞傷害性CD4+T細胞療法の開発研究 | 100 |
| 白血病における細胞傷害性CD4+T細胞のエクフェター機能を検証する。本研究で、Bispecific抗体として使用されるblinatumomabはCD8+ T細胞だけでなく、CD4+ T細胞の殺白血病作用を誘導し、CD2-CD58 axisがその分子機構に大きく寄与していることを明らかにした。定常状態ではCD4+T細胞のmemoryおよびterminal effector分画が細胞傷害性顆粒を発現し、殺白血病作用を有していることが分かったが、ex vivo ではterminal effector分画の細胞分裂能はほぼ認めなかった。一方で、blinatumomabはnaïveおよびmemory分画のCD2 upregulationを誘導し、細胞傷害顆粒を含むT細胞を有意に動員することが分かった。以上より、blinatumomabはimmatureなT細胞のCD2-CD58 axisを活性化することによって、細胞傷害顆粒を含んだ殺白血病作用を有するエフェクターT細胞を誘導する可能性が考えられる。 | |||
| 鈴木 教郎 アブストラクト 研究報告書 | 東北大学未来科学技術共同研究センター 酸素代謝制御プロジェクト | HIF-PH阻害薬による鉄代謝制御を介した貧血治療効果の分子機序 | 100 |
| HIF-PH阻害薬は、低酸素誘導性因子HIFを活性化し、赤血球造血因子EPOの産生を促す貧血治療薬である。これまでに、HIF-PH阻害薬がEPO産生に加えて、鉄利用を促進することにより、治療効果を発揮することが示唆されているが、その機序は不明である。また、現在5種類のHIF-PH阻害薬が使用されているが、各薬剤の特性についても理解が進んでいない。本研究では、各種HIF-PH阻害薬の体内動態とHIF標的遺伝子の発現誘導様式について、マウスを用いて解析した。その結果、薬剤固有の動態とEPO遺伝子発現誘導様式に加え、HIF-PH阻害薬には十二指腸での食餌鉄吸収を促進する作用があることを見出した。また、健常者の鉄代謝状態と遺伝子多型についてGWASを実施し、病態下だけでなく、健常時でも鉄代謝と赤血球造血がHIFを介して相互連関していることを明らかにした。 | |||
| 武藤 朋也 アブストラクト 研究報告書 | 国立がん研究センター研究所 | 変異チロシンキナーゼによる相互作用タンパクネットワーク錯乱から紐解く白血病分子基盤 | 100 |
| FLT3-ITD変異はAMLの予後不良因子であり、FLT3阻害薬の限界を補う新規標的が求められている。本研究では、ユビキチンE3リガーゼTRAF6のFLT3-ITD変異下における役割を検討した。CRISPR-Cas9でFLT3-ITDを導入した白血病細胞株にTRAF6を過剰発現させたところ、野生型FLT3株では影響しない一方で、FLT3-ITD変異株では増殖抑制とSTAT3リン酸化低下を認め、TRAF6のがん抑制的機能が示唆された。さらにハイエンド質量分析とAPEX2近接標識法を用いてTRAF6近傍タンパク質の網羅的同定基盤を構築し、FLT3-ITD特異的TRAF6基質の探索を進めている。 | |||
| 吉田 健一 アブストラクト 研究報告書 | 国立がん研究センター研究所 がん進展研究分野 | コホート研究生体試料のゲノム解析によるクローン性造血の病態解明 | 100 |
| クローン性造血とは、造血細胞がクローン性の増殖をきたしている状態であり、年齢とともに頻度が高くなり、血液がんや心血管疾患などの様々な疾患の発症リスクの上昇と関連していることが知られている。本研究では大規模コホート研究で保存されている生体試料を活用した血液検体の遺伝子解析によりクローン性造血の解析を行う。特に、追跡期間中に造血器腫瘍を発症した症例を中心に解析を行い、検出されたクローン性造血および経時的なクローンの変化と造血器腫瘍の発症との関係についても解析する。これらのデータから造血器腫瘍の発症を予測可能なマーカーとなる遺伝子異常を同定する。また、本研究では通常クローン性造血の解析で使用される末梢血DNAだけでなく血中遊離DNA(cfDNA)についても解析を行い、末梢血DNAとcfDNAを用いた高感度なクローン性造血検出法の開発およびクローン性造血の早期検出による造血器腫瘍の予防を目指す。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 井上 大地 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学大学院医学系研究科 病理学講座 がん病理学教室 | 抗酸化システム破綻による血液老化機構の解明 | 100 |
| 近年、加齢に伴う造血幹細胞における活性酸素種や過酸化脂質の蓄積が注目されているが、レドックス制御機構が血液細胞の運命制御および加齢性造血に果たす役割は十分に解明されていない。本研究では、高齢者の造血幹細胞における抗酸化タンパク質「セレノプロテイン」の発現低下を見出し、血液老化の根幹に迫る可能性を提示した。特殊翻訳機構を利用したTrsp遺伝子欠失により、全セレノプロテイン群の合成破綻を誘導し、細胞種依存的なセレノプロテインの役割を包括的に解明した。最も重要な発見は、これまで不可逆的とされた加齢性造血が脂質過酸化蓄積を介して外因的に制御可能であることを実証した点である。造血老化は全身性疾患の基盤となるため、本研究で明らかにしたセレノプロテイン合成破綻の制御メカニズムは、多くの加齢性疾患の予防的介入戦略として極めて重要な学術的意義を持つ。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 今西 貴之 アブストラクト 研究報告書 | 北里大学医学部医学科 免疫学 | T細胞の老化が加齢関連疾患に及ぼす影響とその分子機序 | 100 |
| 加齢に伴い、様々な老化関連T細胞サブセットの割合が増加することが報告されているが、加齢関連疾患の発症における役割は明らかになっていない。Casp8は、アポトーシスを誘導するとともにRIPK1/RIPK3を介したネクロプトーシスを阻害する分子スイッチとして機能することが知られ、ヒトのCasp8欠損患者では様々な炎症性疾患や免疫不全を遅発性に発症することが報告されている。そこで、T細胞特異的なCasp8欠損(Casp8-tKO)マウスを作製したところ、細胞傷害性CD4T細胞(CD4CTL)の割合が著明に増加し、生後12ヶ月頃から肺の組織傷害や後肢の運動障害、眼球の混濁、体重減少などの加齢関連疾患を発症した。そのため、本研究では、Casp8-tKOマウスを用いて、CD4CTLの分化誘導と加齢関連疾患発症の分子機構を解明することにより、加齢関連疾患の予防と治療の標的分子の同定を目指す。 | |||
| 金城 雄樹 アブストラクト 研究報告書 | 東京慈恵会医科大学 細菌学講座 | NKT 細胞を起点とした獲得免疫の増強機構の解明 | 100 |
| ワクチン接種による感染予防効果をもたらすためには、病原体の抗原に対する結合力の強い(高親和性)抗体の産生と持続といった、獲得免疫の誘導および増強が重要である。本研究は、肺炎や髄膜炎の主な起炎菌である肺炎球菌に対する新規タンパク質・糖脂質ワクチンによる抗原特異的高親和性抗体産生および持続機構の解明を目指し、リンパ球のNKT細胞を介する胚中心B細胞誘導の増強機構を解明することを目的とした。本研究にて、タンパク質抗原にアジュバントとして糖脂質を用いた新規ワクチンが、他のアジュバントを用いた場合と比較して、高親和性抗体の産生増強および持続をもたらすことで、肺炎球菌感染防御効果の持続をもたらすことを示した。本研究の成果をもとに肺炎球菌感染防御効果をもたらす高親和性抗体産生の詳細な誘導機構が明らかになることで、感染防御効果に優れたワクチン開発に繋がり、肺炎球菌感染症予防における貢献が期待される。 | |||
| 竹下 勝 アブストラクト 研究報告書 | 慶應義塾大学医学部 リウマチ膠原病内科 | シェーグレン症候群の自己抗原特異的免疫抑制療法の開発 | 100 |
| シェーグレン症候群の病変局所の浸潤細胞について、T細胞の抗原特異性を初めて明らかにでき、また病変組織内で病的ループを同定できたことは意義が大きく、自己免疫病態の解明に大きく貢献できたと考えられる。今回同定できた抗原情報は分子標的療法の治療薬候補となりうるため、今後の更なる研究の発展が期待される。 | |||
| 田中 芳彦 アブストラクト 研究報告書 | 福岡歯科大学 機能生物化学講座 感染生物学分野 | ヒト歯周病における腸内細菌叢の免疫学的役割 | 100 |
| 歯周病では、歯周病原細菌に応答してインターロイキン-17Aを産生するヘルパーT細胞Th17を介した免疫応答による病態悪化が注目されているが、その免疫応答から病態悪化に至る機構は十分に解明されていない。本研究では、腸-口腔連関の研究基盤において未解決な歯周病の免疫応答の機序を解明するために、歯周炎患者と健常者の便を採取して腸内細菌叢の解析を実施し、両群において多様性が異なる結果を得た。また、マウスに歯周炎患者ならびに健常者の便移植を行い、歯周病感染モデルマウスの実験系で病態を評価したところ、歯周病患者マウスでは歯周病の病態が増悪し感受性になり、健常者マウスで歯周病に抵抗性になる実験結果を得た。歯周病患者マウスに健常者の便移植することで歯周病の重症化が抑制されたことから、歯周病において歯周基本治療に加えて糞便移植療法を実施すれば相乗効果を期待できる可能性がある。 | |||
| 仲宗根 秀樹 アブストラクト 研究報告書 | 自治医科大学 分子病態治療研究センター 領域融合治療研究部 | HTLV-1感染細胞除去のための新規光免疫分子/抗体複合体開発に向けた基盤研究 | 100 |
| 成人T細胞性白血病(ATL)は、HTLV-1の感染によって引き起こされる末梢性T細胞血液腫瘍である。その予後は極めて不良とされ早期に化学療法に抵抗性となる。同種造血細胞移植以外の根治術はないが、治療適応も限られており新規の治療薬開発が望まれている。申請者らは共同研究者とともに、近赤外線照射により初めて細胞傷害性を発揮する新規光免疫分子(SiPc-1)の開発に成功した。そこで、HTLV-1感染細胞に対する新規治療薬シーズに向けSiPc-1を利用した光免疫療法の可能性を探ることとした。抗IL2RA抗体との複合体を合成し検証したところ、IL2RAを発現しているHTLV-1感染細胞株のみを近赤外線照射時のみ特異的に傷害することが明らかとなった。新規光免疫分子/抗体複合体により、①抗体を利用した特異性の向上、②近赤外光を照射時のみの傷害性の発揮による安全性の向上が期待できる。 | |||
| 中溝 聡 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学大学院医学研究科 先端医療基盤共同研究講座(皮膚科兼任) | サルコイドーシス肉芽腫形成における巨細胞の役割の解明 | 100 |
| サルコイドーシスは全身に肉芽腫を形成する難治性疾患であり、ステロイドに代わる安全な新規治療標的が求められている。本研究では、従来のドロップレット型1細胞解析ではサイズ制約から困難であった多核巨細胞の機能解明を目指し、空間トランスクリプトーム法を用いて皮膚病変を解析した。その結果、多核巨細胞局所では貪食・脂質代謝関連遺伝子に加え、酸化ストレス防御因子であるTXNRD1が特異的に高発現していることを見出した。免疫染色による検証に加え、in vitroモデルを用いた機能解析においてTXNRD阻害薬(オーラノフィン等)が巨細胞形成を用量依存的に抑制したことから、TXNRD1が巨細胞形成に必須であることが示された。本成果は、肉芽腫の構造維持に重要なTXNRD1を標的とする新たな治療戦略の有用性を示唆し、既存薬のドラッグ・リポジショニングへの道を開くものである | |||
| 本田 哲也 アブストラクト 研究報告書 | 浜松医科大学医学部 皮膚科学講座 | 細胞内エネルギー代謝理解からの皮膚バリア維持機構の解明 | 100 |
| 皮膚は生体の最外層に位置し、日常的に多様な刺激や異物に曝されている。これらの外的要因から生体を防御し、異物の侵入を防ぐとともに、体内からの水分喪失を抑えるために、皮膚は重要なバリア臓器として機能している。皮膚バリアの破綻は、さまざまなアレルギーや感染症の発症に繋がることから、その恒常性維持は極めて重要である。しかし、皮膚バリア機能の破綻および修復に関わる分子メカニズムには、いまだ不明な点が多い。 本研究では、微弱な機械的刺激によって生じる皮膚バリア障害とその修復過程に、表皮角化細胞の解糖系が深く関与することをマウスモデルを用いて明らかにした。本成果は、皮膚バリア機能の改善を目的とした新規治療・予防法、さらにはアレルギーや炎症性皮膚疾患の発症抑制に向けた新たな治療コンセプトへと発展する可能性がある。 | |||
| 松本 佳則 アブストラクト 研究報告書 | 岡山大学学術研究院医歯薬学域 腎・免疫・内分泌代謝内科学 | 疾患モデルマウスを用いた自己免疫性疾患の病態解明と治療法開発 | 100 |
| 関節リウマチは、自己または外来抗原に対する異常な免疫応答により活性化された炎症細胞からサイトカインが異常産生されることで生じるが、その機序は不明である。 我々は基質蛋白をADPリボシル化して分解誘導する酵素“Tankyrase”をマクロファージでノックアウト(KO)したマウスを作製し、同マウスではサイトカイン異常産生、全身炎症が起こり、自然免疫機構の制御不全を呈することを見出した。その原因としてE3-ubiquitin ligaseであるRNF146との協調によりTankyrase依存的に分解されるチロシンキナーゼのアダプター蛋白“3BP2”の代謝障害、発現量増加によるSRC/Sykの活性化から、TLRのチロシンリン酸化が起こり、シグナル異常活性化からサイトカイン産生が亢進する炎症発生の新たな制御機構を解明した。 そこで我々は、関節リウマチの病因にTankyraseや3BP2が関わるのではないか?と考えた。 | |||
| 森嶋 達也 アブストラクト 研究報告書 | 熊本大学国際先端医学研究機構 | ミトコンドリアtRNA修飾による造血・免疫恒常性維持機構の解明 | 100 |
| 転移RNA(tRNA)が化学修飾を介してその機能制御を受けることは古くから知られているが、tRNA修飾の欠失が成体造血に及ぼす影響については不明であった。申請者らはミトコンドリアtRNA修飾酵素Mto1の造血特異的ノックアウトマウスを用いて成体造血におけるミトコンドリアtRNA修飾の機能を解析した。その結果、Mto1ノックアウトマウスでは大球性貧血ならびに骨髄球系前駆細胞の増加と成熟好中球の減少を伴ういわゆる無効造血の所見を認め、末梢血・骨髄血球細胞の形態学的異常を認めるなど、骨髄異形成症候群(MDS)患者に特徴的な所見が認められた。これに一致して、骨髄球系前駆細胞を用いたRNAシークエンス解析ではMDSとの関与が報告されているHypoxia関連遺伝子の発現上昇が認められた。本研究成果はtRNA修飾の異常がMDSや白血病などの血液悪性腫瘍疾患の発症に関与している可能性を示唆している。 | |||
| 山本 浩之 アブストラクト 研究報告書 | 国立感染症研究所 エイズ研究センター | 新たな遺伝様式を示すLIG4不全型疾患の病態解明 | 100 |
| ウイルス感染易感受性の全貌は明らかでなく、一因として「潜性遺伝ほど破局的・全身性の病像でないが、免疫障害を起こす顕性遺伝の先天性免疫不全疾患(IEI)が多数未同定である」可能性が挙げられる。申請者はこのよう「隠れ免疫疾患」の例として、従前は「潜性遺伝・小児期発症・全身症状」が通念であったDNAリガーゼ4(LIG4)不全症に、「顕性遺伝・成人発症・免疫固有」の3徴を示す新疾患、顕性LIG4 不全症候群が存在することを発見した。この更なる性状解明と、疾患概念の拡がりの比較解析的な描出を目的に、バーゼル大学病院の前向きIEIコホートの患者データ蓄積・臨床検体のex vivo及び機能的評価再構成実験系による蛋白機能評価等を組み合わせ疾患概念の描出を試みた。結果、初報した家系における新たな患者の特定、新規2独立家系における新たな単アリルLIG4変異保有CID患者2例の特定とそれらの再構成評価系における機能減弱表現型の示唆を得た。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 小西 達矢 アブストラクト 研究報告書 | 愛媛大学医学部附属病院 輸血・細胞治療部 | 二重特異性抗体を用いた新規移植片対宿主病治療法の開発研究 | 100 |
| 同種造血幹細胞移植における腸管GVHDは治療抵抗性で予後不良であり、治療である免疫抑制剤の全身投与はGVL効果の減弱と感染症リスク増大を招く。本研究では、腸管上皮幹細胞に発現するLgr5と免疫抑制性分子TIGITのリガンドCD155を標的とする新規二重特異性抗体(CD155×Lgr5 scFv)を作製し、局所的免疫抑制誘導による選択的GVHD制御を目指した。TIGIT特異的scFvは得られなかったが、代替設計による3種のモダリティはいずれもTIGITまたはLgr5強制発現細胞に特異的結合を示した。CAR-T細胞の系では抑制効果は認めなかったが、生理的活性化レベルに近いT細胞に対しては増殖抑制が確認された。これらの結果は、本モダリティが腸管局所における過剰な免疫反応を抑制しうる可能性を示し、臓器選択的免疫制御に基づく新規GVHD治療戦略として発展が期待される。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 仙波 雄一郎 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学大学院医学研究院 プレシジョン医療学分野 | 難治性白血病における治療抵抗性を辿る運命クローンの追跡と新規治療標的探索 | 100 |
| 固形腫瘍で高頻度に認める癌抑制遺伝子TP53の変異は、AMLにおいて全体の約8%、高齢者の約20%にみられる、最も強力な予後不良因子である。今回、CRISPRスクリーニングを用いてTP53変異AMLの薬剤抵抗性に関わる経路としてXPO7/NPAT経路を新たに同定した。XPO7/NPAT経路を阻害することで、TP53変異AML細胞の細胞増殖を特に抑制することが明らかとなった。また、治療経過中の患者検体のscRNA-seq解析を行うことで、再発検体でこの遺伝子発現が亢進しており、さらに、治療前から少数クローンとして存在していることが明らかとなった。 | |||
| 陳 思婧 アブストラクト 研究報告書 | 千葉大学大学院医学研究院 イノベーション再生医学 | iPS細胞由来血小板の安定製造を目指す免疫巨核球制御法の開発 | 100 |
| 社会の少子高齢化により、献血に依存しない血小板製剤の安定供給が求められている。私たちはiPS細胞由来血小板の製造ソースとなる巨核球株imMKCLを樹立し、世界初のiPS血小板輸血試験を実施した。しかし、大規模製造にはimMKCLの不均一性が課題である。マイクロRNAスイッチ技術により解析した結果、imMKCLには免疫巨核球に相当するサブ集団が存在し、let-7低下と免疫シグナル活性化を特徴として血小板産生を阻害することを見出した。さらに、低分子量GTPase RALBが免疫表現型と産生能の鍵となる調節因子であることを明らかにした。本研究では、let-7-RALB軸の上流に位置するエピジェネティックおよび転写制御機構を解明し、iPS血小板産生効率向上の新たな基盤構築を目指す。 | |||
| 藤田 進也 アブストラクト 研究報告書 | 国立国際医療研究センター研究所 生体恒常性プロジェクト | PIEZO1機械受容による造血幹細胞ホーミング制御機構の解明と生着向上技術の創出 | 100 |
| 造血幹細胞移植の成否には骨髄へのホーミングが重要であるが、実臨床でホーミングを改善する方法は存在しない。本研究では in vivo/全骨髄イメージングを主軸とした解析を行い、侵害受容神経‐CGRP 系と機械受容 PIEZO1 を中心とした新規ホーミング制御機構を解析した。CGRP は動脈を拡張し, 類洞のせん断応力を維持して血管内皮細胞のPIEZO1 を活性化する。活性化したPIEZO1はCaイオンを流入させ類洞血管内皮細胞間のバリアを弱めることで、造血幹細胞の経内皮間移動を促進した。CGRP antagonist、侵害受容神経障害、Ramp1 欠損はいずれもホーミングと生着を低下させた。一方、PIEZO1 アゴニスト投与はこれらを改善し、コントロールでもホーミングを促進した。以上より、骨髄微小環境の力学的制御が生着向上の新たな治療標的となることが示された。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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| 伊藤 崇 アブストラクト 研究報告書 | 千葉大学大学院医学研究院 アレルギー・臨床免疫学 | Th2型腸炎における短鎖脂肪酸-GPR43陽性ILC2の制御機構の解明 | 100 |
| 腸内細菌叢が産生する短鎖脂肪酸(SCFA)は腸管の恒常性維持に関与するが、ILC2への直接的作用は不明である。本研究者は一細胞RNA解析から、ILC2にSCFA受容体GPR43が発現することを見出し、SCFA‐GPR43陽性ILC2が腸炎を抑制すると仮説した。GPR43欠損マウスにおいてDSS腸炎誘導モデルの表現型を解析した結果、腸炎下でもILC2にGPR43の発現は持続し、GPR43欠損マウスでは体重減少や炎症が増悪した。さらに腸内細菌叢を枯渇させるとGPR43による炎症抑制効果は消失した。以上より、GPR43陽性ILC2が腸内細菌依存的に腸炎を抑制することが示され、短鎖脂肪酸-GPR43-ILC2経路は炎症性腸疾患の新たな治療標的となる可能性が示唆された。 | |||
| 勝海 悟郎 アブストラクト 研究報告書 | 順天堂大学医学部 内科学教室 循環器内科学講座 | 老化細胞における新規免疫チェックポイント因子の個体老化における意義解明と治療開発 | 100 |
| 本研究は老化細胞で発現増加する新規免疫チェックポイント因子「Interleukin - InducibleFactor:ILIF」が個体内における老化細胞蓄積にどのように寄与し、老化ならびに加齢関連疾患の病態への影響を与えるかを検証検証すること、ならびに本分子を標的とした新規老化細胞除去治療の開発を目的とした。老化細胞中のILIFを欠失させた状態でと脾臓由来免疫細胞の共培養すると、T細胞の活性化が促されることが分かり、さらにILIFを標的としたワクチンを肥満糖尿病・ 動脈硬化・加齢マウスに接種すると、老化細胞の蓄積が抑制されるとともに各疾患の病的表現型が改善し得ることが分かった。 ILIFを標的とした免疫細胞が持つ老化細胞除去機能の促進は抗加齢治療戦略の1つとして有望と考えられた。 | |||
| 佐伯 龍之介 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学 | クローン性造血における免疫応答異常と疾患感受性メカニズムの解明 | 100 |
| 本研究では、クローン性造血(Clonal hematopoiesis, CH)が疾患リスクに与える影響とその病態基盤を明らかにすることを目的として、大規模COVID-19コホートおよびバイオバンク・ジャパン(BBJ)検体を用いた解析を行った。4,731例のCOVID-19患者解析により、CH全体と重症化リスクとの明確な関連は認められなかったが、主要ドライバー遺伝子であるDNMT3A変異は死亡リスクと有意に関連する傾向を示した。RNA-seqおよび血漿プロテオミクス解析から、DNMT3A変異がインターフェロン応答低下やサイトカイン異常を介して予後不良に関与する可能性が示唆された。さらにBBJ約46,000例の解析により、微小クローンを含む高感度なCH検出基盤を確立し、今後の疾患横断的解析に向けた基盤を構築した。 | |||
| 中濱 泰祐 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学大学院医学系研究科 神経遺伝子学 | 血液細胞分化における左巻きZ型RNA制御の役割の解明 | 100 |
| 生体内に存在する2本鎖RNAは通常右巻きであるが、近年、左巻き(Z型)RNAが形成されることが明らかとなり、その生理的意義が注目されている。申請者は、RNA編集酵素ADAR1のZ型RNA結合活性を喪失させたマウスが造血障害や生後致死を示すことを見出したため、本研究ではその詳細について解析を行った。その結果、ADAR1によるZ型RNA制御の破綻が、I型インターフェロン(IFN)を介してZBP1を誘導し、造血障害を引き起こしていることが明らかになった。ZBP1もADAR1と同様のZ型RNA結合ドメインを持つことから、ADAR1とZBP1が内在性Z型RNAに対して競合的に作用していることが示唆された。 | |||
| 名和田 隆司 アブストラクト 研究報告書 | 山口大学大学院医学系研究科 器官病態内科学 | 2型リアノジン受容体を分子標的とした自己免疫疾患の新規治療開発 | 100 |
| 2型リアノジン受容体(RyR2)を分子標的とした自己免疫疾患の治療開発のための基盤構築を行うことを目的として、RyR2へのカルモジュリンの結合親和性を高めることで、RyR2の4量体構造を遺伝的に安定化させた「RyR2-V3599K ノックイン(KI)マウス」を用いて、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎モデルマウスと自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルマウスを作成し、RyR2の構造安定化によるDSS誘発性大腸炎とEAEの抑制効果を検証した。 DSS誘発性大腸炎とEAEのいずれにおいても、RyR2-V3599K KIマウス群では、疾患発症が抑制されており、生体内のRyR2の構造を安定化することによって、大腸と脳脊髄という異なる臓器における免疫異常が改善し得ることが示された。 今後、「どの免疫細胞のRyR2の構造安定化が免疫異常是正に重要なのか?」を解明することができれば、RyR2を分子標的とした新規の自己免疫疾患治療の開発に繋がることが期待される。 | |||
| 吉本 哲也 アブストラクト 研究報告書 | 広島大学病院 口腔先端治療開発学 | 新規疾患iPS細胞を用いた侵襲性歯周炎の病態解明と治療戦略の開発 | 100 |
| 侵襲性歯周炎は10~20代で発症し、急速かつ重篤な歯周組織破壊を特徴とする稀少疾患である。家族内集積が知られていたが、病因遺伝子は不明であった。本研究では、家族性症例の全エクソーム解析により、MMD2のヘテロ接合性ミスセンス変異を同定した。MMD2は好中球に高発現し、患者由来好中球では細菌病原因子に対する遊走能の著明な低下が認められた。さらにプロテオミクス解析により、細胞機能異常を示す発現変化が検出された。 ヒト変異を導入したMmd2ノックインマウスでは、歯周炎モデル下で顕著な歯槽骨吸収と好中球浸潤低下を呈し、感染菌の持続も確認された。これらの結果は、MMD2変異が好中球機能障害を引き起こし、局所防御不全と炎症を介して歯周組織破壊を誘導することを示す。 本研究により、侵襲性歯周炎が単なる感染症ではなく、自然免疫異常を背景とする宿主遺伝性疾患であることが初めて明確となった。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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| (留学先) | |||
| 麻生 啓文 | 東京科学大学M&Dデータ科学センター AIシステム医科学分野 | 血液内結核菌制御関連分子の網羅的同定 | 500 |
| Division of Infectious Diseases Department of Medicine Solna Karolinska Institutet, Sweden | |||
| 鈴木 雄太郎 | 東京大学医科学研究所 幹細胞分子医学分野 | 白血病幹細胞における転写ダイナミクス異常の解明 | 500 |
| Albert Einstein College of Medicine, U.S.A. | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 中野 正博 アブストラクト 研究報告書 | 理化学研究所 生命医科学研究センター ヒト免疫遺伝研究チーム | 高精度シングルセル解析による関節リウマチ重症化機構の解明 | 100 |
| 関節リウマチ (RA) は関節滑膜が侵される自己免疫疾患であり、既存治療に反応不十分な重症例が臨床での重要課題である。RAの重症化には特定の細胞集団 (病原性細胞) が関与し、その機能は特定の遺伝子 (key driver gene) により制御されると想定される。本研究では、高精度シングルセル解析をRA患者末梢血に応用することで、重症RA患者で増多する病原性細胞とそのkey driver geneを精密に同定し、その機能を解明することを目的とする。昨年度までに確立した新たなシングルセル解析手法をRAのCITE-seq dataへ応用し、軽症RAに比して、重症RAにおいてARHGAP15+FOXO1+ T cells、GZMK+GZMH+HLA-DR+ effector memory CD8+ T cellsといった細胞集団が増多することが新たに見出された。 | |||