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精神薬療分野 「平成29年度」

平成29年度(第50回)
精神薬療分野 一般研究助成金受領者一覧
<交付件数:20件、助成額:2,000万円>

統合失調症

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題区分
(*)
助成額
(万円)
竹内 啓善
アブストラクト
研究報告書
慶應義塾大学医学部
精神・神経科学教室
治療抵抗性統合失調症における服薬アドヒアランス 2 100
統合失調症のうち約30%は、2種類以上の抗精神病薬を十分投与しても症状改善が不十分な治療抵抗性統合失調症に分類されるが、その一部は十分服薬ができていないことによる「見かけ上の」治療抵抗性統合失調症の可能性がある。最も精度が高い服薬アドヒアランス測定方法にMedication Event Monitoring System(MEMS)があり、本研究ではMEMSにより治療抵抗性統合失調症患者の服薬アドヒアランスを12週間前向きに測定し、見かけの治療抵抗性統合失調症の存在の頻度を明らかにし、かつ服薬アドヒアランスと精神症状との関係を調査する。現在、各施設の倫理委員会の承認を受け、合計4名の対象者を組み入れている。引き続き、対象者のリクルートを進めていくと共に、服薬アドヒアランス、精神症状などのデータ収集を行っていく予定である。
西川 徹
アブストラクト
研究報告書
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
認知行動医学系専攻 脳行動病態学講座
精神行動医科学分野
D-セリンシグナル調節系の解明と統合失調症の病態解析および治療法開発への応用 2 100
D-セリンシグナル系を調節する分子細胞機構の解析と統合失調症の新しい治療法開発への応用に関する研究を行った。D-セリンの細胞外放出を抑制する、カルシウム透過性AMPA型グルタミン酸受容体の選択的遮断薬が、統合失調症モデルのフェンサイクリジンまたはMK-801(NMDA受容体機能低下モデル)、およびメタンフェタミン(ドーパミン伝達亢進モデル)を投与したマウスの双方の行動変化を改善することを明らかにした。この結果は、CP-AMPA受容体が新規抗精神病薬開発の標的分子となる可能性を示唆している。また、細胞外D-セリン濃度は、前頭葉のグリアが豊富な白質とニューロンが主要な成分の灰白質の間で同等であり、ニューロンの脱分極によって、神経伝達物質アミノ酸が増加するのと反対に減少することから、ニューロンとグリアの双方により神経伝達物質とは異なる調節を受けていると推測された。
疋田 貴俊
アブストラクト
研究報告書
大阪大学蛋白質研究所
蛋白質高次機能学研究部門
高次脳機能学研究室
モデルマウスを用いた統合失調症の神経回路病態の研究 1 100
統合失調症は遺伝要因と環境要因の組み合わせによって発症する複合疾患である。統合失調症においては幻覚妄想などの精神症状がみられる前に認知障害が存在するが、その神経基盤については明らかではなかった。そこで、タッチスクリーン認知学習測定装置を用いて、タッチスクリーンに表示されるキューと報酬を関連づけさせる認知学習課題を行った。さらにこの認知学習の神経回路機構を調べるために、側坐核、背側線条体内側部、背側線条体外側部のそれぞれに、大脳基底核神経回路の直接路あるいは間接路に特異的な可逆的神経伝達法を適用した。その結果から、報酬を関連づけさせる認知学習において側坐核の直接路が特異的に関与することが示された。今後、統合失調症モデルマウスをはじめとした精神疾患モデルマウスの認知学習行動を解析することによって、それぞれの精神疾患特異的な神経回路病態を明らかに出来ることが期待される。
平野 羊嗣
アブストラクト
研究報告書
九州大学大学院医学研究院
精神病態医学
統合失調症の発症に関わる神経同期活動異常の解明 1 100
統合失調症は進行性に機能低下を来たし、社会的損失も大きくその病態解明は喫緊の課題である。近年、統合失調症では、知覚や認知機能を司るガンマ帯域の皮質活動が異常をきたし、それが病態に関連することがわかってきた。ガンマ帯域の皮質活動はその発生機序が比較的に明確で、新たなバイオマーカーとして注目されている。本研究では、発症初期における音刺激に対するガンマ帯皮質活動異常を検索した。初発統合失調症約23名とその対象群約39名に対し、再現性の高い20、30、40ヘルツ頻度の連続音刺激を提示した際の、脳波の聴性定常反応と自発皮質活動を解析した。その結果、統合失調症では、慢性期のみならず、既にその発症初期において、30~40ヘルツ頻度の音刺激による同期ガンマの低下と自発ガンマの上昇の双方の異常が出現していることが示された。本指標は、早期の診断や治療介入に応用可能なバイオマーカーとして有用だと思われる。
森 大輔
アブストラクト
研究報告書
名古屋大学脳とこころの研究センター Reelin欠失統合失調症患者型モデルマウスによる分子病態解明 1 100
本研究課題において、新規自作したリーリン欠失患者型モデルマウスの表現型解析を実施し、ホモ欠失マウスにおいては滑脳症様の大脳皮質、海馬構造異常を認め、ヘテロ欠失マウスでは一般的な行動解析から統合失調症様症状の一部を認めたことから本マウスはモデルマウスになり得ることを見出した。in vitro neurite migration assayから、リーリン欠失患者由来iPS細胞から分化した神経細胞遊走と同様の表現型を得たことから、ヒトとマウスで進化的に保存された分子メカニズムから統合失調症の発症につながることを強く示唆した。

気分障害

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題区分*助成額
(万円)
池田 匡志
アブストラクト
研究報告書
藤田保健衛生大学医学部
精神神経科学
ポリジェニックモデルを考慮した双極性障害の”CNV prioritization” 1 100
双極性障害(BD)の遺伝子研究は、頻度の高い遺伝子多型(SNP)が有意な関連を報告されている一方、稀な変異であるコピー数変異(CNV)の関与は明確でない。本研究では、BDにおける「候補リスクCNV」の寄与を明確化するため、「候補CNVの有無により層別化した」サンプルにおけるリスクSNPの総和(ポリジェニックスコア)が異なるかを検討した(仮説では候補CNVを持たないサンプルのスコアが高い:3102名のBDサンプル)。
その結果、候補CNVを持たないBD vs CNVを持つBDにおけるポリジェニックスコアは、有意な差を検出できなかった。すなわち、「CNVを持つBDは、polygenicによる寄与が少ない」という仮説を支持しない結果であった。しかし、CNVの有無で階層化したことで、サンプル数が限定的となり、検出力不足に陥っている可能性が高いため、今後も、サンプル数を拡大して解析することが必須である。
岩田 正明
アブストラクト
研究報告書
鳥取大学医学部
脳神経医科学講座
精神行動医学分野
NLRP3の活性化抑制をターゲットとした精神疾患の新規治療薬の開発 1 100
これまで精神疾患は疾病単位で病態が捉えられ、その病態に基づいた疾病ごとの治療薬が開発されてきた。しかし近年、種々の精神疾患は「炎症」という共通の病態により発症または修飾される可能性が示唆されるようになった。炎症をひき起こすメカニズムのうち、特にNLRP3は多種多様な物質を感知して炎症を引き起こす非常にcriticalな細胞内受容体である。そこで、炎症惹起の中枢となるNLRP3の活性化抑制を創薬ターゲットとすることで、様々な精神疾患の予防および治療に役立つことが期待される。Beta-hydroxybutyrate(BHB)はNLRP3の抑制作用を有する生体内産生ケトン体の一種である。本研究ではBHBの経口投与が、うつ病モデル動物に対して抗うつ・抗不安効果を有することが明らかになった。今後はさらに、脳内炎症仮説に基づく、特定の疾病にターゲットを限定しない疾病横断的な新規治療薬の開発を目指す。
加藤 正樹
アブストラクト
研究報告書
関西医科大学医学部
精神神経科
遺伝子発現制御因子によるうつ病プレシジョンメディシンを目指した臨床薬理研究 2 100
本研究は、網羅的なmiRNA解析にて、SSRIとミルタザピンの治療反応と相関するmiRNAと関連するパスウェイを同定することを目的とした。未治療のうつ病サンプル105名を対象に、網羅的なmiRNA解析を行った。21種類のmiRNAがSSRIによる治療2週後のHAM-D変化率と相関しており(R2=0.89, p=7.09E-05)、miR-4526(p=9.85E-05) がTop hitであった。また、早期HAM-D変化率と関連のあったmiRNAのうち15種類は治療後4週のHAM-D変化率(%)とも相関していた(R2=0.81, p=0.002)。4種類のmiRNAsが有意にMirtazapineによる治療2週後のHAM-D変化率と相関しており(R2=0.28, p=0.017)top hitsがmiR-483-3pであった。MAPK signaling pathwayと Thyroid hormone synthesis pathway は、どちらの薬剤とも関連していたが、それぞれのpathway上で同じ遺伝子だけでなく、異なる遺伝子をターゲットとしていた。
西 大輔
アブストラクト
研究報告書
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
精神保健計画研究部
周産期うつ病におけるオメガ3系脂肪酸とアディポネクチンの関連 2 100
妊婦のうつ症状に対するオメガ3系脂肪酸の有効性を検討する多施設共同RCTから得られた血液を用いて、ベースラインのアディポネクチン値によってオメガ3系脂肪酸の抗うつ効果が変わるかを検討することを目的とした。108人の妊婦がRCTに参加し、オメガ3系脂肪酸群(介入群)に55人、プラセボ群に53人が割り付けられた。このうち、追跡調査を完遂したのは介入群49人、プラセボ群51人であった。
研究の結果、初回調査時のアディポネクチン値が中央値より低い群と高い群で、いずれもオメガ3系脂肪酸による抗うつ効果は示されなかった。日本が欧米に比べて肥満者が少なく、アディポネクチン値が非常に低い人がもともと少ないことが今回の研究結果に影響を与えている可能性が考えられた。
オメガ3系脂肪酸の抗うつ効果が期待できる人を同定する際に炎症以外の要因に着目する必要性を明らかにした点が、本研究の意義と考えられる。
等 誠司
アブストラクト
研究報告書
滋賀医科大学
生理学講座
統合臓器生理学部門
自殺者およびカニクイザルを用いた大うつ病の病態解明 1 100
我々は、大うつ病患者の死後脳を用いた解析で、前頭極灰白質におけるオリゴデンドロサイト系譜細胞の減少を見出したことから、大うつ病の病態メカニズムに迫ることを目的に本研究を計画した。ヒト死後脳などを用いて、前頭極灰白質から神経細胞やオリゴデンドロサイト系譜細胞などの細胞種ごとに細胞核を抽出し、次世代シーケンサーによる網羅的メチル化解析を行ったところ、細胞種によって異なるDNAメチル化プロファイルをもつことが判明した。一方、インターフェロンα慢性投与による大うつ病モデルカニクイザルを作製し、オリゴデンドロサイト系譜細胞のDNAメチル化プロファイルを解析したところ、Sox10遺伝子などのプロモーター領域が低メチル化傾向であることが明らかとなった。以上の結果は、大うつ病の病態にオリゴデンドロサイト系譜細胞のエピゲノム異常が関与するという、我々の仮説を支持するものであった。

脳器質疾患・認知症

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題区分*助成額
(万円)
石崎 泰樹
アブストラクト
研究報告書
群馬大学大学院医学系研究科
医科学専攻
分子細胞生物学
アルツハイマー型認知症前駆期における白質虚血に対する修復法の開発 2 100
アルツハイマー病などの認知症を前駆期に先制治療を実施し、認知症発症を防止することが国家的な課題となっている。最近の知見からアルツハイマー型認知症の発症防止には白質高信号対策が重要であることが示唆されている。我々は血管内皮細胞移植によって脱髄巣のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)の数が増加すること、血管内皮細胞の培養上清から単離した細胞外小胞(EV)はOPCsのアポトーシスを抑制し、増殖を亢進させることを明らかにした。本研究では血管内皮細胞由来のEVが包含するOPCsの生存・増殖促進分子を明らかにすることを目的とし、EVにPDGF-Bが含まれていること、このPDGF-BによりOPCsの増殖が促進される可能性が高いことを明らかにした。今後は別の候補タンパク質について検討するとともに、miRNAのOPCsに対する効果の検討を進め、OPCsの生存・増殖促進に寄与する因子を明らかにしたい。
石橋 賢士
アブストラクト
研究報告書
東京都健康長寿医療センター
神経画像研究チーム
神経内科学、神経学医学
精神疾患におけるミクログリアイメージング:新規TSPOリガンドによる探索研究 1 100
ミクログリアの活性化は炎症の存在を示唆する。ミクログリアが活性化するとミトコンドリア外膜に存在するTSPOが過剰発現する。したがって、PETを用いてTSPOを定量測定することにより、ミクログリアの活性化の程度を画像化することができる。
あらゆる脳疾患でミクログリアの活性化が示唆されており、ミクログリア活性の画像化は、種々の脳疾患の病態の評価や治療方針の決定に有用な情報を与え得る。近年、ミクログリア活性を画像化する第2世代TSPO-PETリガンドとして、11C-CB184が開発された。本研究では、11C-CB184はどの程度のミクログリアの活性化を画像化できるのか、について検討を行った。結果、MRI等で検出できない炎症を11C-CB184 PETでは検出できる可能性が示唆された。今後、11C-CB184の有用性について、対象疾患の拡大や病理組織との関連性など、更なる検討が必要である。
黒滝 直弘
アブストラクト
研究報告書
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
精神神経科学
正常圧水頭症多発家系の臨床及び分子遺伝学解析による新規治療法の開発 1 100
治療可能な認知症とされる正常圧水頭症(iNPH)の分子生物学的病態を明らかにし治療法や可能な予防法を提案し高齢化社会への貢献を計ることが本研究の背景である。私達は特発性正常圧水頭症(iNPH)の2世代にわたる家族集積例を経験した。そこで遺伝子変異による病態が強く示唆されたので、倫理的な問題を配慮しながら当該家系の中で、罹患者4名、健常者5名の全エキソーム解析を行い、罹患者特有の遺伝子変異の有無を検索した。その結果遺伝子Xの点突然変異が罹患者に特有に同定された。そこで遺伝子Xの機能解析を主にCRISPR/Cas9システムを用いて作成したモデルマウスを解析したところ脳室全体の繊毛の発育不全が著明に観察された。よって本家系におけるiNPHの病態は髄液の循環不全であると結論した。さらにモデルマウスの呼吸器系や精巣でも繊毛の発育不全を認めたことから、感染症や不妊等の合併症を有する可能性が示唆された。
東海林 幹夫
アブストラクト
研究報告書
弘前大学大学院医学研究科
脳神経内科学
植物性経口Aβワクチンによる安全で安価な抗アルツハイマー病薬の開発 2 100
組み換えダイズ蛋白の経口免疫で,Aβ+内のAβ4-10構造を認識するIgG抗体が産生され、Aβ oligomer除去への関与が考えられた。細胞性免疫では抗炎症作用をもつIL-10の産生増加が主であり、Th1介在細胞免疫の抑制が考えられた。学習障害の悪化は21週から最終の51週にわたって抑制され、認知機能低下の予防効果が示された。可溶性Aβ oligomerの減少と不溶性の高分子量Aβの増加から、可溶性Aβが不溶性分画へ隔離された可能性がある。脳Aβの減少は不溶性のcore plaqueよりも非線維性のdiffuse plaqueに主に認められ、Aβの不溶性分画への隔離を支持する所見であった。Aβ+経口免疫は安全で有効なADの疾患修飾療法になりうると考えられた。以上の基礎的検討でAβ+ワクチンの有効性と安全性が検証された。今後は、日本発の新たなAD病態修飾薬の開発と臨床応用を目指して病態修飾薬開発の手順に移行し、AD予防の第Ⅰ相臨床試験へ展開を考えている。
田上 真次
アブストラクト
研究報告書
大阪大学大学院医学系研究科
精神医学教室
アルツハイマー病根本治療薬開発の新指標を構築する 2 100
アルツハイマー病病理過程の上流にあるアミロイドβ蛋白(Aβ)が毒性を発揮する時期に、薬剤を投与すべく抗Aβ薬剤の予防的投与が検討されている。我々はγセクレターゼによる最終分泌産物であると考えられていたAβ42が、実はγセクレターゼの基質となり、さらに凝集性が乏しいAβ38に切断されることを発見した。そしてAβ産生の際に産生される副産物、3-4アミノ酸ペプチド(γバイプロダクト)を細胞内で検出することに成功した。本研究では我々が確立したシステムを用いてAβが産生される際に細胞内に放出されるγバイプロダクトを網羅的に解析し、それらの定量とcharacterizationを行った。驚くべきことに、γセクレターゼ阻害剤数種類を細胞に添加すると、γバイプロダクト量は減るどころか増大した。さらに、それらの薬剤により細胞内にAβ46やAβ43などのC末延長型Aβ量が増大していることもわかった。
野村 洋
アブストラクト
研究報告書
北海道大学大学院薬学研究院
薬理学研究室
ヒスタミン神経系の活性化による記憶調節機構の解明 2 100
記憶障害は認知症の主症状の1つで、生活の質を著しく低下させる。一度は覚えたが、時間の経過や認知症の進行によって思い出せなくなる。一見失われたように見える記憶も、記憶の想起を増強すれば回復できると考えられるが、記憶の想起を増強し記憶を回復させる薬物は存在しない。本研究は、ヒスタミン神経系を選択的に制御し、記憶想起に対する影響を解明することを目的として行った。HDC-Creノックインマウスと化学遺伝学的手法を用いて、ヒスタミン神経を選択的に標識し、活性化した。そしてこのマウスに対して新規物体認識試験を行い、忘れた記憶が回復するかを検討した。通常、トレーニングから1週間経過すると物体記憶は思い出せない。しかし1週間後のテスト直前にヒスタミン神経を選択的に活性化すると、物体記憶を回復できることを明らかにした。本研究の成果により、ヒスタミン神経系の活性化が認知症治療のターゲットになることを提唱する。
福森 亮雄
アブストラクト
研究報告書
国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター
分子基盤研究部 認知症病態解析室
γセクレターゼのエクソサイトを標的とするアルツハイマー病の治療薬の開発 2 100
アルツハイマー病患者の脳に蓄積するアミロイドβ蛋白(Aβ)を除去するAβ抗体療法がフェーズIII治験中である。ただ、抗体療法によりAβを除去しても、Aβは生理的に産生され続けるため、引き続き維持療法が必要となる。維持療法としては、毒性Aβの産生自体を止める化合物ベースの薬(安価、経口)が望まれるだろう。これまでに開発されたAβ産生阻害薬は副作用がおこり、臨床応用できていない。そこで、我々は独自に発見したエクソサイトと呼ばれる基質結合部位を標的とすることで、副作用のないAβ産生選択的阻害薬の開発を目指している。今回そのエクソサイトでの結合メカニズムについての研究を行い、その基質認識は柔軟性がある事を明らかにした。今回の結果を応用することで、エクソサイト結合を標的とするAβ産生選択的阻害薬の開発につながるかもしれない。
渡邊 裕美
アブストラクト
研究報告書
新潟大学大学院医歯学総合研究科
環境予防医学分野
尿プロテオミクスによるアルツハイマー病早期診断マーカーの開発 2 100
アルツハイマー病は記憶障害などの臨床症状出現に先立つこと20年有余から脳の病理的変化が始まっている。臨床的症状を発したアルツハイマー病の有効な治療薬がない現在、早期の患者、あるいはハイリスク者を同定する為のバイオマーカーが求められている。本研究は、無侵襲的に採取できる尿から質量分析技術を用いてアルツハイマー病のバイオマーカーを探索することを目的とした。患者・対照尿各18検体のプロテオミクスを行った。その結果、患者尿プロテオームの変化はアルツハイマー病の背景となる全身性変化(糖代謝や炎症など)を反映している可能性が示唆された。患者尿で有意に変動したタンパク質の幾つかについてELISAを行ったところそのうちの2つが質量分析の結果を再現した。しかし、別の患者対象尿セットでのELISAでは同様の結果を得ることは出来なかった。今後、ELISAで未検討の他の候補タンパク質についての解析をすすめる。

発達障害

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題区分*助成額
(万円)
伊藤 雅之
アブストラクト
研究報告書
国立精神・神経医療研究センター
神経研究所
疾病研究第二部
シングルセル解析による結節性硬化症の発生機序に関わる遺伝的異質性の解明 1 100
本研究では、結節性硬化症(TSC)のシングルセル解析による癌抑制遺伝子の遺伝的異質性(LOH)とその発症病態を解明する。TSCはてんかんや知的障害、精神症状など中枢神経系を中核とした多彩な症状を様々な程度に呈する疾患である。原因遺伝子TSC1とTSC2は癌抑制遺伝子であり、TSCの発症はtwo-hit理論で説明されている。TSCの病態を細胞レベルで解析し、TSCの発症機序とLOHの関連性を分子遺伝学的に解明する。
対象は、TSC患者3例の脳組織である。病巣からマイクロダイセクションにより異常細胞を取り出しDNA抽出し、TSCの原因遺伝子解析を行なった。次に、遺伝子異常とLOHの解析を調べた。その結果、TSC2遺伝子異常があることを確認し、対立遺伝子のTSC2遺伝子変異解析を行なっている。
本研究をさらに進展させることで、TSCのLOHの生物学的意義を明らかにするだけでなく、広く類縁疾患の分子機構の解明と新たな治療法開発の基盤になることが期待できる。
山形 要人
アブストラクト
研究報告書
東京都医学総合研究所
脳発達・神経再生研究分野
アストロサイトの異常によるASD:ヒトiPS細胞を用いた検証と治療薬 1 100
結節性硬化症の患者にみられる精神症状の一つとして自閉症が知られているが、その発症メカニズムは明らかにされていない。私たちは、これまで結節性硬化症の原因遺伝子Tsc1をアストロサイトで欠損させたマウスが社会行動異常を起こすことを発見している。さらに、このマウスに低分子量G蛋白質Rhebを抑制する薬物(Rheb阻害薬)を投与すると、行動異常が改善することも確認している。そこで、本研究では、ヒトiPS細胞のTsc2遺伝子にCRISPR/Cas9法を用いて変異を導入し、疾患iPS細胞を樹立した。さらに、このiPS細胞からアストロサイトへの分化に世界で初めて成功した。その結果、Tsc2-/-アストロサイトは野生型に比べて大きく、GFAPの発現量も多いことがわかった。今後は、Tsc欠損がアストロサイトの機能(グルタミン酸取り込みなど)に及ぼす影響を明らかにし、Rheb阻害剤による回復を検証していく。
*応募区分1:精神疾患の病因、病態に関連する研究(遺伝子研究を含む)
*応募区分2:精神疾患の症状、診断、治療に関連する研究(症例研究や疫学研究を含む)

平成29年度(第11回)
精神薬療分野 若手研究者助成金受領者一覧
<交付件数:10件、助成額:1,000万円>

統合失調症

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題区分*助成額
(万円)
笹林 大樹
アブストラクト
研究報告書
富山大学附属病院
神経精神科
精神病発症危険状態における大脳皮質下領域の構造の検討-多施設共同研究- 1 100
大脳皮質下領域は学習・感情・動機づけ等多様な役割を担い、統合失調症では海馬、扁桃体、視床、側坐核の体積減少と側脳室、尾状核、被殻、淡蒼球の体積増加が報告されるが、at-risk mental state(ARMS)群における先行研究は乏しい。国内4施設が連携し、107例のARMS群(うち発症群21例、非発症群72例)、104例の健常群の磁気共鳴画像を撮像した。FreeSurferを用いて、皮質下諸核の平均体積・側性指数(laterality index: LI)を群間比較した。ARMS群は健常群と比べ、両側側脳室、左尾状核、左淡蒼球(男性のみ)の体積増加、右側坐核の体積減少、および側脳室、尾状核、淡蒼球のLI値の高値を認めた。発症群と非発症群間では差異を認めなかった。ARMS群における左側優位の側脳室、尾状核、淡蒼球の体積増加は、精神病性障害への全般的な脆弱性に関わる脳形態変化を表す可能性がある。

気分障害

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題区分*助成額
(万円)
菅原 裕子
アブストラクト
研究報告書
熊本大学医学部附属病院
神経精神科
高齢者うつ病におけるエピゲノムバイオマーカーの開発 1 100
本研究では、高齢者うつ病における異質性検出のためのバイオマーカー探索を目的とし、高齢健常者、高齢者うつ病患者、高齢者双極性障害患者、DLB患者の末梢血由来DNAを用いて、既知の候補遺伝子についてDNAメチル化解析を行う。今回、予備的解析として、日本医療研究開発機構「健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究」に参加した地域在住高齢者のうち、遺伝子解析に関する同意を得られた1533名の末梢血を用いて、セロトニントランスポーター遺伝子(SLC6A4)のプロモーター領域にある多型(5-HTTLPR)のgenotypingを行うとともに、抑うつ症状(geriatric depression scale: GDS)との関連を調べた。プロモーター活性を考慮に入れ分類したS/S, S/L, L/Lの3群間でGDS値に有意差は認められなかった(p=0.73)。この結果は、GDSがカットオフ値以上の抑うつ症状が認められた高齢者のみを対象とした場合も同様であった。

脳器質疾患・認知症

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題区分*助成額
(万円)
武田 朱公
アブストラクト
研究報告書
大阪大学大学院医学系研究科
臨床遺伝子治療学
病的タウの神経細胞間伝播を標的とした認知症治療法の開発 1 100
認知症の原因で最も多いのがアルツハイマー病(AD)であるが、現時点で根本的な治療法は確立されていない。AD患者の脳内には神経原線維変化(タウ細胞内凝集体)と呼ばれる病理所見が出現し、その脳内での広がりが認知症の重症度と相関する。本課題では、ADの進行過程におけるタウ病理の役割を明らかにし、それに基づいた新規治療法や病態バイオマーカーを確立することを目的とした。特にタウ蛋白が神経細胞間を移動する過程(タウ伝播)に着目し、その分子機構の解明と修飾因子の同定を行った。研究成果として、タウ伝播のハイスループット評価系の構築、タウ伝播を標的とした抗体療法の最適エピトープの同定、タウ伝播の修飾因子の解析、タウ関連髄液マーカー探索のためのプレクリニカルモデルの構築、などが達成された。
野田 賀大
アブストラクト
研究報告書
慶應義塾大学医学部
精神・神経科学教室
アルツハイマー病患者の認知機能と関連した前頭前野のコリン作動性神経機能の解析 1 100
本研究では、軽度認知障害者の前頭前野のコリン作動性神経生理機能を経頭蓋磁気刺激法と高精度脳波計を用いて非侵襲的に計測し、磁気刺激誘発脳波と認知機能との関連性を同定することを目的としている。認知機能障害の有無や程度を非侵襲的に定量化できる医学的検査法を開発することで、将来的には超高齢社会における軽度認知障害さらには認知症患者の急増といった社会問題を解決することを目指している。磁気刺激の標的部位は左背外側前頭前野とし、神経生理検査の前にMRI撮像を行い、MRIガイド下ニューロナビゲーションにて被験者毎に同定した。短潜時求心性抑制によるコリン作動性神経生理機能(SAI)を計測した。現在、健常被験者4名に対して左背外側前頭前野におけるTMS-EEG SAI実験を実施した。プレリミナリー解析では、SAIパラダイムにおいて刺激部位においてN100成分の減弱を認め、我々の先行研究結果を再現する結果となった(Noda et al., 2016)。
宮崎 雄
アブストラクト
研究報告書
大阪大学大学院医学系研究科
神経遺伝子学
TDP-43 mRNAの代謝を介した前頭側頭葉変性症の病態解明と治療法開発 1 100
前頭側頭型認知症(FTD)患者では大脳の前頭葉や側頭葉を中心に変性部位の神経細胞において、TARDBP遺伝子の産物であるTDP-43が細胞質に蓄積している。また、TDP-43の細胞質内蓄積は、FTDと筋萎縮性側索硬化症(ALS)に共通した病理変化でもあり、家族性ALS/FTDの一部でTARDBP遺伝子に変異が同定されていることから、TARDBP遺伝子とTDP-43はこれらの疾患の発症病態の鍵を握っていると考えられる。
我々は先行実験として、ALS/FTD患者で同定されているTARDBP遺伝子変異をマウス当該遺伝子Tardbpにノックイン(KI)することで新規モデルマウス(KIマウス)を作製した。
本研究では、1) KIマウスを対象にFTDに特徴的な行動異常を伴う高次脳機能障害の評価を行いFTDモデルとしての有用性を検証すること、2) KIマウスの中枢神経組織におけるRNA代謝を解析し、FTDの発症病態につながるRNA代謝経路を同定することを目的に研究を行った。

発達障害

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題区分*助成額
(万円)
佐々木 哲也
アブストラクト
研究報告書
国立精神・神経医療研究センター
神経研究所
微細構造研究部
オーバーシュート型シナプス形成異常による自閉症発現機構の解明 1 100
霊長類の大脳皮質では、出生直後から幼児期にかけて興奮性シナプスが急速に増え、児童期に最大値に達した後、減少するということが知られている。自閉症様行動を示す胎生期バルプロ酸曝露マーモセットを用いて、ヒト自閉症患者に見られる「オーバーシュート型」のシナプス形成の異常とその基盤となる分子メカニズムを探ることを本プロジェクトの目的とした。定型発達個体では、生後90日齢から成体にかけてスパイン密度が低下する「刈り込み」が起こるのに対して、VPAマーモセットでは観察されず、この霊長類モデル動物でASD患者のシナプス刈り込み不全を再現できていることが分かった。この病態モデルでは、補体分子や免疫関連分子の発現量が顕著に変動していた。VPAマーモセットは自閉症脳の特徴を反映することが示されつつあり、今後新たな自閉症病態モデル動物として治療法の開発に貢献することが期待される。
藤野 純也
アブストラクト
研究報告書
昭和大学発達障害医療研究所
脳画像研究室
磁気刺激法を用いて検証する発達障害における社会的行動障害 1 100
自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害では、葛藤を伴う複雑な場面を、柔軟に対処できないことが多く、社会参加が妨げられている。このため、同疾患群の社会的適応能力を高める治療法の開発が切望されているが、いまだ有効な医学的支援は限られているのが現状である。その要因の一つとして、同疾患群の社会的行動障害の病態理解が、いまだ不十分なことがあげられる。本研究課題では、ASD当事者を対象に、日常的な場面で、葛藤が起こりうる状況を設定し、この際の意思決定課題を行った。ここでは、社会的に柔軟にモラル感情をとらえ、他人の意図や文脈を考慮して意思決定を行う際の脳活動を、fMRIを用いて評価した。また、定型発達群を対象に、反復性経頭蓋磁気刺激法を用いた実験を行った。以上により、発達障害の社会的行動特性に関わる神経ネットワークについて検証した。
栁下 楠
アブストラクト
研究報告書
埼玉医科大学医学部
薬理学
自閉症における性ホルモンの新たな分子病態の解明 1 100
自閉症は発症率の男女差が大きく、男児は女児の4~6倍にも上る。男女比を生み出す原因は、胎児期の脳内のテストステロンだと考えられているが、その分子機序は明らかになっていない。そこで、本研究ではテストステロンの分子機序を自閉症関連分子との関わりから検討する。また、高い社会性を有し、ヒトに近い生態を呈するげっ歯類の自閉症モデルとして、デグーの妥当性を検討する。培養細胞を用いてシナプスを模したモデルを構築することで、テストステロンのシナプスタンパク質に対する影響を見出した。また、テストステロンと結合するシナプスタンパク質を検出した。更に、デグーの自閉症関連分子をクローニングした結果、他のげっ歯類に比べヒトの配列と類似率が高いことが明らかになった。これらのことより、デグーを詳しく解析することで更なる自閉症研究の発展が期待される。また、性ホルモンの自閉症発症に対する分子メカニズムの解明が期待される。

その他

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題区分*助成額
(万円)
久島 周
アブストラクト
研究報告書
名古屋大学高等研究院(医)
精神医学分野
精神疾患の統合的ゲノム解析と分子病態研究 1 100
ゲノム解析技術の進展を背景に、精神疾患の発症に関与するゲノム変異が同定されつつある。特に、頻度の稀なゲノムコピー数変異(CNV)は、統合失調症(SCZ)、自閉スペクトラム症(ASD)、双極性障害(BP)の発症に強く関与することが明らかになりつつある。またこれらの研究から、3疾患の病因・病態上の重複を示唆する知見も増えているが、その全貌は明らかになっていない。本研究ではSCZ、ASD、BPの3大精神疾患を対象にCNV解析を実施し、各疾患の病因・病態におけるCNVの役割を検討した。具体的には、各疾患において発症関連CNVと疾患パスウェイを同定し、3疾患の間での重複について明らかにした。加えて、SCZ患者で同定したRELN欠失に着目し、患者iPS細胞を用いて本欠失がニューロン遊走に与える影響を見出し、脳病態における意義を明らかにした。
長谷川 恵美
アブストラクト
研究報告書
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構
櫻井研究室
環境に応じた行動を支える覚醒系と筋緊張の制御機構の解明 1 100
睡眠障害の一つであるナルコレプシーはオレキシン欠損症であるため、ナルコレプシーの症状に関わる神経回路の解明を進めることにより、オレキシン神経の下流で睡眠・覚醒調節及び行動の変容に重要な役割を果たす神経経路の解明を目指すことを目的とした。これまでに、睡眠発作は青斑核・ノルアドレナリン作動性ニューロンを、カタプレキシーは背側縫線核・セロトニン作動性ニューロンを介して、オレキシンニューロンにより抑制されることを明らかにした。そこで本研究では、これまでのデータを基にして、睡眠・覚醒調節に重要な役割を果たす神経経路のさらなる探索を試みた。さらに、外部環境からの情報よる適切な行動の選択に、睡眠・覚醒制御機構が関与しているという新しい視点の提供にも試みた。光遺伝学的手法と薬理遺伝学的手法を用いることで、覚醒の維持と筋緊張の維持に関わっている神経経路を、ニューロンタイプ特異的に検討することができた。
*応募区分1:精神疾患の病因、病態に関連する研究(遺伝子研究を含む)
*応募区分2:精神疾患の症状、診断、治療に関連する研究(症例研究や疫学研究を含む)

平成29年度
精神薬療分野 若手研究者継続助成金受領者
<交付件数:1件、助成額:100万円>

気分障害

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題区分*助成額
(万円)
近藤 誠
アブストラクト
研究報告書
大阪大学大学院医学系研究科
神経細胞生物学講座
難治性うつ病に対する新たな治療戦略の確立のための基盤研究 2 100
現在、うつ病治療にはSSRIを主とする抗うつ薬が用いられているが、既存薬抵抗性のうつ病患者は大変多く、新規治療薬が望まれている。近年我々は、運動による抗うつ効果に5HT3受容体が必須である事、更に、5HT3受容体アゴニストを投与すると海馬でIGF1分泌が促されて神経新生が増加し、SSRIと異なる機序で抗うつ効果が得られる事を見出し、5HT3受容体を介する新たな抗うつ機序を明らかにした。本研究では、うつ病モデルマウスにおける5HT3受容体アゴニストの海馬神経新生促進、抗うつ効果について検討した。LPS投与によるうつ病モデルマウスでは海馬神経新生が減少し、うつ状態を示したが、5HT3受容体アゴニストを投与すると海馬神経新生は増加してうつ状態は改善し、うつ病モデル動物において抗うつ効果をもたらす事が明らかとなった。今後、5HT3受容体を標的とする新たなうつ病治療薬開発に繋がる可能性が期待できる。
*応募区分1:精神疾患の病因、病態に関連する研究(遺伝子研究を含む)
*応募区分2:精神疾患の症状、診断、治療に関連する研究(症例研究や疫学研究を含む)

平成29年度(第21回)
精神薬療分野 海外留学助成金受領者一覧
<交付件数:2件、助成額:1,000万円>

(五十音順、敬称略)
研究者名所属機関研究課題助成額
(万円)
(留学先)
宮川 統爾 東京大学医学部附属病院
神経内科
認知症大規模コホート研究からのバイオマーカー解析 500
Mayo Clinic, U.S.A.
山崎 礼二 東京薬科大学薬学部機能形態学教室 脱髄性疾患や発達障害における脳内クレアチン代謝の役割 500
Department of Biology, Georgetown University, U.S.A.
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