| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 糸数 隆秀 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学大学院医学系研究科 創薬神経科学 | 血管周囲腔NETsによるくも膜下出血後微小血管攣縮誘発メカニズムの解明 | 100 |
| くも膜下出血(SAH)後に生じる脳虚血の一つの要因として、細動脈レベルで生じる微小血管攣縮(microvasospasm)の重要性が近年着目されているが、その実態は殆ど解明されていない。我々は独自のイメージング実験系により、SAH後、細動脈血管周囲腔へ好中球が浸潤し、引き続いて好中球細胞外トラップ(NETs)が生じることを見出した。さらに、DNaseの髄腔内投与でNETsを除去できることを見出した。これらの知見を併せ、NETs出現タイミングに合わせた髄腔へのDNase投与を実施し、引き続き血管形態の経時的イメージングを行ったところ、微小血管攣縮が大幅に抑制されることが明らかになった。現在引き続き、血管周囲腔へのNETs放出から微小血管攣縮に至る具体的な分子細胞メカニズム探索を進めている。 | |||
| 瀬原 吉英 アブストラクト 研究報告書 | 自治医科大学分子病態治療研究センター 遺伝子治療研究部 | 新規開発血管平滑筋指向性AAVベクターによる脳小血管病治療 | 100 |
| アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus, AAV)ベクターは、安全で効率の良い遺伝子導入ツールとして研究・臨床の現場において広く使われている。本研究では、AAVベクターの遺伝子導入効率(指向性)が表面のカプシドタンパク質のアミノ酸配列によって異なることに着目し、人工的に血管平滑筋への指向性を高めたAAVベクターを開発することにした。これまでに、カプシドの一部にランダム配列を挿入したAAVを作製し、マウスおよびヒト培養血管平滑筋細胞においてスクリーニングを行った。次世代シークエンスを行った結果、リード数の多い2種類の配列は、スクリーニングを繰り返すことで過半数を占めた。今後はこれらの配列を用いて霊長類での組織学的検証へと進む。 | |||
| 中村 晋之 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 | マクロファージが制御する脳梗塞後の血管・組織修復機構の解明と機能回復治療の探索 | 100 |
| 脳梗塞後の機能回復には血管新生や組織修復が重要であるが、その分子機構は十分に解明されていない。本研究では、浸潤マクロファージが血管・組織修復に果たす役割を明らかにすることを目的とした。マウス脳梗塞モデルにおいてクロドロネートによりマクロファージを除去したところ、ミエリンデブリスの残存、線維性ECM形成の低下、脳血流回復の遅延が認められた。また、血管新生およびPDGFRβ陽性ペリサイトの動員は大きく抑制された。さらに、脳由来CD34⁺細胞は培養条件に応じて内皮細胞様またはペリサイト様に分化し、血管再構築に関わる可能性が示された。以上より、マクロファージはデブリス除去のみならず血管修復とペリサイト動員を促進する重要な細胞であり、脳梗塞後の組織修復を標的とした新規治療戦略の基盤となると考えられる。今後は、これらの相互作用と分化誘導の分子基盤をより詳細に解析する必要がある。 | |||
| 森戸 大介 アブストラクト 研究報告書 | 昭和大学医学部 生化学講座 | もやもや病遺伝子の生化学・細胞生物学的解析 | 100 |
| もやもや病は稀な脳血管疾患である。頭蓋内動脈の狭窄により、脳虚血、脳梗塞、脳出血、各種の神経症状などが引き起こされる。発病のメカニズムは不明であるが、患者の多くがミステリン遺伝子変異を持つことから、本遺伝子の異常機能が発病に関係すると考えられた。本研究では培養細胞内での変異ミステリンの挙動を検証することにより、もやもや病の分子・細胞レベルの発端(=原因)をつきとめることを目指した。解析により、変異ミステリンは特定のオルガネラを外来性の病原体と誤認して攻撃し、新奇な自己炎症応答を活性化することをつきとめた。すなわちもやもや病は新奇な自己炎症性疾患であると考えられた。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 相澤 健一 アブストラクト 研究報告書 | 自治医科大学附属病院 トランスレーショナルリサーチ推進部 | 質量解析によるトランスサイレチン型心アミロイドーシスの病態解明と革新的診断法開発 | 100 |
| トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)の診断は、侵襲的心筋生検およびLDMS法に依存し、感度やスループット、患者負担の点で大きな課題が存在する。本研究では、三連四重極型質量分析計(LC-TQ-MS/MS)を用いてトランスサイレチン(TTR)および免疫グロブリン軽鎖(κ・λ)を高感度に検出する分析系を構築し、MRMトランジションの確立、内部標準導入による再現性の向上、分析条件の最適化に成功した。検出下限は数ng/mL~数十ng/mLと推定され、低侵襲検体への臨床応用可能性が示された。本法は従来法の制約を克服し、非侵襲的診断体系の実現に寄与する基盤技術として期待される。 | |||
| 磯部 更紗 アブストラクト 研究報告書 | 国際医療福祉大学 三田病院 循環器内科 | 肺高血圧症の血管内皮細胞障害に着目した新規治療法の開発 | 100 |
| 肺動脈性肺高血圧症は、肺動脈のリモデリングと右心不全を特徴とし、その病態形成の中心には肺血管内皮細胞の障害がある。我々はこれまで、BMPR2 シグナル低下が内皮細胞アポトーシス亢進、平滑筋増殖抑制の破綻、炎症誘導、内皮間葉転換および DNA 損傷蓄積を引き起こし、PAH の進展に寄与することを報告してきた。さらに、FOXF1 低下が DNA 損傷修復不全と内皮恒常性破綻の原因となる分子機序を明らかにしている。本研究では、FOXF1 の発現回復により内皮細胞の恒常性維持に関わる遺伝子群が改善する傾向を示した。また、mRNA を用いた一過性発現解析でも内皮細胞における良好な応答と分子レベルの改善が得られた。以上より、内皮修復経路は PAH の新たな治療標的となり得ることが示され、内皮機能の回復を目指す治療戦略の有用性が示唆された。 | |||
| 加藤 久和 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学大学院医学系研究科 医化学 | HFpEFの新規治療薬開発を目指した非侵襲的代謝画像診断法の確立 | 100 |
| 高齢者心不全、とくに拡張不全では、加齢に伴うミトコンドリア機能低下による心筋代謝異常が関与すると考えられるが、診断法・治療法はいまだ確立されていない。我々は低酸素下でATP産生を増強する臓器保護分子G0S2を同定し、その安定化化合物#S8Xを見出した。本研究では、心不全における代謝シフトの非侵襲的評価法として[11C]acetate PETを確立するとともに、G0S2安定化化合物の有効性を検証した。Ndufs6 KO心不全モデルマウスでは、ミトコンドリア機能障害に伴うKmono低下が検出され、#S8X投与により心機能改善とKmono上昇が認められた。これらの結果から、[11C]acetate PETは心不全の代謝異常を定量的に評価可能であり、G0S2を標的としたミトコンドリア代謝改善は新たな治療戦略となり得ることが示唆された。 | |||
| 候 聡志 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学大学院医学系研究科 先端循環器医科学講座 | クローン性造血への介入による心不全の新規治療戦略 | 100 |
| 本研究は、クローン性造血(CHIP)が拡張型心筋症(DCM)による心不全を増悪させる分子機序を解明し、新規治療標的を同定することを目的とした。CHIP-DCMモデルマウスおよびCHIP陽性DCM患者心臓を対象に、一核RNAシークエンスや空間遺伝子発現解析を行った結果、CHIP存在下では炎症惹起性マクロファージが特異的に出現し、IL-1β産生やNLRP3インフラマソーム活性化が亢進していることが明らかとなった。これらマクロファージの特異的マーカーとしてlncRNAであるGene Nを同定し、Gene N欠損により心機能低下や線維化が改善した。Gene NはCHIP関連心不全に対する新たな治療標的となる可能性が示唆された。 | |||
| 柴 祐司 アブストラクト 研究報告書 | 信州大学医学部 再生医科学教室 | 次世代心筋再生治療の開発 | 100 |
| 心不全の根治は心臓移植のみだがドナー不足が深刻であり、多能性幹細胞由来心筋細胞(iPS-CM)を用いた再生治療が期待される。しかし現行の臨床試験では、移植細胞の生着不良と移植後不整脈が未解決である。本研究はこの2課題を克服した次世代心筋再生治療の確立を目的とした。生着効率改善では、血管新生を指標とするCRYABレポーターiPS細胞を用いたスクリーニングで化合物Aを見出し、血管新生促進とラット移植モデルでの生着向上を確認した。不整脈管理では、アミオダロンとイバブラジンの併用がカニクイザルモデルで移植後不整脈を著明に抑制することを示した。これらの成果は心筋再生治療の有効性・安全性向上に貢献する。 | |||
| 下田 将之 アブストラクト 研究報告書 | 東京慈恵会医科大学医学部 病理学講座 | HA-ECMクロスリンク破綻を介した急性大動脈解離発症機序の解明 | 100 |
| 急性大動脈解離(acute aortic dissection=AAD)は血管壁の恒常性破綻と血圧上昇により発症しうる致死率の高い循環器救急疾患であり、生活習慣病や加齢などがその危険因子として知られている。本研究では、我々独自に開発したAADマウスモデルと空間的遺伝子発現解析を融合することにより、AAD大動脈壁で高発現する分子群を同定し、AAD発症に細胞外マトリックス(extracellular matrix=ECM)リモデリングが関与していることを見出した。さらに、ECMの主要な構成成分であるヒアルロン酸(hyaluronic acid=HA)代謝に関わる遺伝子改変マウスを用いた解析から、HA代謝異常が大動脈壁破綻に寄与している可能性が示唆された。本研究成果は、AAD発症機序の解明に貢献しうるとともに、大動脈壁ECM代謝の制御が潜在的な新規予防医薬創出の基盤となりうる点においても意義があるものと考えられる。 | |||
| 塚本 蔵 アブストラクト 研究報告書 | 兵庫医科大学医学部 生化学 | 心筋サルコメアの機能と構造を改善する新規心不全治療薬の開発 | 100 |
| 心不全、とくにHFrEFは予後不良であり、従来のCa²⁺依存的強心薬は不整脈や酸素需要増大により予後悪化を招く。本研究では、サルコメアを直接活性化する「myotrope」に基づき、心臓特異的ミオシン調節軽鎖キナーゼ(cMLCK)を標的とする新規心不全治療薬の開発を目的とした。2024~2025年度に60化合物を合成し、ヒトおよびラットcMLCKに対する活性から7化合物をリード候補として選抜した。さらに、iPS心筋細胞および成熟化オルガノイド系を用いた薬効評価基盤を構築し、今後の前臨床研究に向けた準備が整った。本研究は、cMLCK活性化薬の開発に向けた重要な初期ステップを達成したものであり、HFrEFに対する新たな治療選択肢創出に寄与する。 | |||
| 長尾 学 アブストラクト 研究報告書 | 神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 立証検査医学分野 | 心臓線維化を反映する血液バイオマーカーの探索 | 100 |
| 心臓線維化はHFpEFにおける左室スティフネス上昇の主因であり、高血圧や糖尿病などの非心疾患でも進行するため、早期検出が困難である。本研究は、血液から心臓線維化の程度を把握しうるバイオマーカーの探索を目的とした。既報のオミクス解析から候補分子を選定し、心疾患患者48例において造影CTによる心筋線維化指標(ECV)と血中タンパク質濃度の相関を検討した。M2BPGi、FAP、CILP、FSTL3のECVとの相関はそれぞれR²=0.0012、0.0021、0.0932、0.0055と低く、NT-proBNPではR²=0.1891とより高値であった。ECVは間質浮腫も反映し、血中タンパクは心臓以外の臓器由来の可能性もあり、これらが本研究の制約と考えられる。今後は心臓線維芽細胞特異的な分泌タンパク質の探索および大規模コホートでの検証が必要である。 | |||
| 橋本 亨 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学大学院医学研究院 循環器内科学分野 | 小胞体ストレス起因性カルシウム制御異常によるHFpEFの病態機構解明と治療応用 | 100 |
| 【背景・目的】病態未解明の拡張不全を伴う心不全(HFpEF)における、ストア作動性Ca2+流入(SOCE)とホスホジエステラーゼ1A(PDE1A)の役割を検討した。 【方法・結果】高脂肪食とL-NAMEで誘発したHFpEFマウス心筋では、PDE1A、小胞体ストレス応答因子、SOCE関連因子(STIM1、TRPC3/6)、CaMの発現が増加していた。解析により、TRPC6とPDE1Aの相互作用と共局在が判明し、「小胞体ストレス応答―SOCE―Ca2+/CaM」を介したPDE1Aの活性化が示唆された。 また、HFpEF心筋ではPDE1A活性化に伴うPKG活性低下により、PLBのリン酸化が抑制され、筋小胞体へのCa2+取り込み減少と拡張障害を招くことが示された。PDE1Aの遺伝子ノックダウンや阻害薬の投与は、これらの病態を改善し、HFpEFの発症を有意に抑制した。 【結論】PDE1Aは小胞体ストレスやTRPC6を介して活性化し、HFpEFの病態進展に深く関与しており、有力な治療標的となり得る。 | |||
| 橋本 寿之 アブストラクト 研究報告書 | 慶應義塾大学医学部 循環器内科 | DNA損傷を標的とした新たな心不全治療法の開発 | 100 |
| 心不全では成熟心筋細胞にDNA損傷が蓄積し、DNA損傷応答の恒常的活性化を介してp53依存性アポトーシスや機能低下が生じる。本研究では、心筋成熟と強く相関する新規RNA結合タンパク質Csdc2に着目し、その心筋保護機構を解析した。Csdc2は心不全心筋で発現低下し、欠損マウスではドキソルビシン負荷により心機能低下、線維化増加、ミトコンドリア代謝破綻が顕著となった。一方、心筋特異的Csdc2過剰発現はDNA損傷に耐性を示し、ドキソルビシン誘導性心筋障害を軽減した。以上より、Csdc2は心筋細胞におけるDNA損傷耐性を制御する因子であり、心不全に対する新規治療標的となる可能性が示された。 | |||
| 東邦 康智 アブストラクト 研究報告書 | 自治医科大学分子病態治療研究センター 人類遺伝学研究部 | 核酸認識機構を介した心筋細胞老化と心不全発症メカニズムの解明 | 100 |
| 心不全発症には心筋細胞老化が寄与することが報告されているが、その詳細な機序は不明である。本研究では、心不全期に心筋細胞で発現が増加する核酸センサー分子がRNAスプライシング、及びDNA損傷や転写効率に関連するR-loop形成に深く寄与することを明らかにした。また、同分子がエクソソーム分泌に関与する他、同分子の機能発現において独自の下流経路を有する可能性を明らかにした。これらの結果は、核酸センサー分子がセントラルドグマの様々な階層における構造・機能変容に寄与することを示唆するほか、エクソソームを介した老化伝播メカニズムにも関与する可能性を示している。本研究の成果は、核酸認識機構を介した心筋細胞老化とその伝播を標的とする、新規心不全治療の開発につながる。 | |||
| 福井 一 アブストラクト 研究報告書 | 徳島大学先端酵素学研究所 生体力学シグナル分野 | 血流がもたらす摩擦抵抗-熱応答による心臓弁形成機構 | 100 |
| 心臓は物理的ストレスを常に感受する代表的な臓器であり、物理刺激は心臓発生から成体心機能の恒常性に至るまで必須の役割を果たす。申請者はゼブラフィッシュを用いた研究から、心臓管腔内における直接的な力学応答機構(Ca2+流入ーNfatシグナル)を見出してきた。ただし、『拍動する心臓で発生する「どの」力に応答して、「どのように」本応答活性が規定されるのか』は不明である。本課題では、粘性をもつ血液流体中の摩擦から生じる熱が生体シグナルを制御する可能性について検証した。まず、熱応答性蛍光センサープローブを発現するゼブラフィッシュ系統の樹立から、熱変化を個体レベルで定量解析する実験系構築に成功した。また、心内膜内皮細胞は熱刺激に応答してCa2+レベルが増加することが明らかになった。本応答は膜電位依存性チャネル活性が関わることが示唆され、細胞応答を実行する候補因子について変異体を樹立して研究継続中である。 | |||
| 堀江 貴裕 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学大学院医学研究科 循環器内科学 | 非コードRNA制御による新規HFpEF治療薬の開発 | 100 |
| 高齢化とともに心不全患者数は増大し、近い将来心不全パンデミックが起こると予想されている。心不全患者の約半数は収縮能が保たれた心不全(HFpEF)とされるが、その機序は明らかでなく、治療法も十分でない。ヒトゲノムの蛋白をコードする遺伝子領域はわずか2%程度であり、残りの領域からタンパク質をコードしない非コードRNAが非常に多く転写されている。特に20塩基程度の短鎖非コードRNAの一つであるマイクロRNA(miRNA)が様々な生命現象や病態形成に関与していることが示され、疾患治療への応用が検討されつつある。マウスを用いたHFpEFモデルにおいて同定されたmiRNAが心臓の炎症・線維化に寄与していることが本検討から示唆された。また、HFpEFの原因病態である高血圧や肥満などで誘導されている可能性があると考えられる。これらのmiRNAを標的とすることは、HFpEFに対する新たな治療戦略となり得ると考えられる。 | |||
| 三阪 智史 アブストラクト 研究報告書 | 福島県立医科大学 循環器内科学講座 地域先端循環器病治療学講座 | JAK2V617F関連免疫血栓を標的とした血栓性疾患の新規治療戦略 | 100 |
| 本研究では、申請者らが継続して取り組むJAK2V617Fクローン性造血における血栓形成促進機構を解明する。JAK2V617Fマウスを用い、下大静脈狭窄モデルや塩化第二鉄誘導モデルにより静脈血栓形成を解析し、in vivoおよびin vitroの両面からアプローチして、JAK2V617Fが血栓を促進する分子基盤を明らかにする。特に好中球細胞外トラップ(NETs)形成、JAK2-STAT-ALK1経路、血小板活性化などの関与を詳細に検討する。これらの知見に基づき、JAK2V617F関連血栓性疾患という概念の下、Immunothrombosis に着目した新規治療標的を探索し、精密医療への応用可能性を検証する。 | |||
| 宮岡 佑一郎 アブストラクト 研究報告書 | 東京都医学総合研究所 疾患制御研究分野 再生医療プロジェクト | 生体心臓を真に再現する4倍体iPS細胞由来心筋細胞モデルの確立 | 100 |
| iPS細胞由来心筋細胞(iPS-CM)の未熟性は、心筋症モデルや心毒性検出試験などへの応用において課題である。生体心筋細胞は、成熟過程において2倍体から4倍体へと染色体数を倍加させるが、通常のiPS-CMはこの4倍体化を再現できない。そこで申請者は、2倍体iPS細胞同士の融合により、4倍体iPS細胞を樹立してから心筋細胞へと分化させることで、4倍体iPS-CMを得ることに世界で初めて成功した。 本研究では、4倍体iPS細胞由来心筋細胞が、2倍体iPS細胞由来心筋細胞よりも強く、速い収縮を示すこと、さらにカリウムチャネルであるTerfenadineに対して、より強い抵抗性を持つことを示した。これらの結果から、4倍体iPS細胞の樹立とその心筋細胞分化によって、従来の2倍体iPS細胞由来心筋細胞に比較して、より忠実に生体心臓を再現する優れた心筋細胞モデルが作製可能であることを示した。 | |||
| 山口 雄大 アブストラクト 研究報告書 | 国立感染症研究所 細菌第一部 口腔細菌感染症室 | 歯周病原細菌由来の菌体外膜小胞を介した口腔ー心臓連関の解明 | 100 |
| 歯周病は、歯周病原細菌による限局性慢性感染が引き起こす口腔疾患で、成人の7割近くが罹患する国民病である。近年の研究で、歯周病が心不全発症の新たな危険因子の一つであることが疫学的に明らかになってきたが、心臓と口腔、2つの遠隔臓器の疾患がなぜ関連するのか、その詳細な機序は明らかではない。 本研究では、歯周病原細菌由来のエクソソーム様の菌体外膜小胞(EVs)がもつ心臓の炎症・線維化誘導性に着目し、歯周病起因性の心不全発症機構の解明を目的とした。 EVsの持続投与は投与部位から遠隔した心臓や肺の炎症を惹起し、心臓のリモデリング(心不全の前駆病変)の誘導に関わる遺伝子群の発現変化が認められた。今後、EVsの心不全発症や促進に関する知見を集め、歯周病起因性の心不全発症機構の解明を目指す。 | |||
| 由良 義充 アブストラクト 研究報告書 | 名古屋大学医学部附属病院 循環器内科 | 免疫細胞の遺伝子変異を手がかりに探る大動脈瘤の新規診断・治療の開発研究 | 100 |
| 本研究は、加齢に伴い後天的遺伝子変異を有する造血幹細胞が増殖した状態「クローン性造血」が、大動脈瘤の進展に及ぼす影響とその分子機序を解明し、新規診断・治療戦略の創出を目的とした。Tet2変異クローン性造血モデルマウスでは、大動脈瘤の拡大が顕著であり、そのメカニズムとして、変異マクロファージではMMP-9を産生し弾性線維を破壊する破骨細胞様の分化促進が見られることが確認された。さらに、大動脈瘤患者検体解析により、クローン性造血保有例で瘤径拡大速度が有意に速いことが示された。以上より、クローン性造血は大動脈瘤進展の重要な修飾因子であり、今後の個別化医療への応用可能性が示唆された。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 小川 正太郎 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学医学部 脳神経外科 | 新規血管奇形関連遺伝子GJA4改変モデルマウスを用いた脳血管奇形発症機序の解明 | 100 |
| 我々は脳卒中の主要な原因の一つである海綿状血管奇形に関して、新規の疾患関連遺伝子Gap Junction Protein Alpha 4 (GJA4)を同定した。血管病変形成におけるGJA4遺伝子の果たす役割を明らかにするべく、CRISPR-Cas9によりGJA4変異を導入したLSL-Gja4 conditional knock-in マウスを新規に樹立した。このマウスをまず、Tie2-Creマウスと交配し、胎児期に全身の血管内皮細胞にGJA4変異を誘導したところ、GJA4変異が発現した全マウスが胎児期の血管形成異常により胎生致死に至った。さらに、Tie2-CreERT2マウスと交配し病変を誘導したところ、タモキシフェン投与の投与回数・投与量に依存して、全身の血管異常が増悪した。GJA4変異は何らかのメカニズムを介して血管構造の破綻を誘起し、血管病変の形成に寄与することが示唆された。 | |||
| 高井 淳 アブストラクト 研究報告書 | 東北医科薬科大学医学部 医化学 | 転写因子による細胞外マトリックス制御機構から迫る脳小血管病発症機序の解明 | 100 |
| 脳小血管病(CSVD)の分子病態解明を目的に、転写因子GATA2に着目した。GATA2-GFPノックインマウスを用いた解析により、GATA2は成体脳血管内皮細胞に広く発現していた。ドキシサイクリン誘導性GATA2発現細胞のRNA-seq、ATAC-seq、CUT&Tagから、GATA2はCSVD関連IV型コラーゲンCol4a1/Col4a2遺伝子座に結合し、クロマチンアクセス性と発現を亢進させることが判明した。以上より、GATA2は脳血管ECM制御のマスター因子としてCSVD発症に関与する可能性が示唆された。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 網岡 尚史 アブストラクト 研究報告書 | 岡山大学医学部 循環器内科 | インテグリンα1に着目した腹部大動脈瘤の病態機序解明と新規治療法の開発 | 100 |
| 腹部大動脈瘤(AAA)は致死率の高い疾患であるが、内科的治療は未確立である。Public dataを用いたscRNA-seq再解析により、AAAにおいてSMCの表現型変換とインテグリン介在経路の亢進を認め、Itga1がSMCに高発現していたことから本分子に着目した。AngII誘導AAAモデルにおいて全身性Itga1ノックアウトによりAAA破裂は有意に抑制され、Tnfa発現、MMP9活性、エラスチン破壊も低下した。今後はSMC特異的Itga1欠損モデルを用い、分子機序の解明を進める。 | |||
| 稲住 英明 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学大学院医学研究科 循環器内科学 | 心拡張障害進展におけるTRPC3/C6の意義の解明と新規治療法の確立 | 100 |
| 収縮能が保たれた心不全(HFpEF)は有効な治療法が乏しく、その病態解明と新規治療法の開発が急務である。我々は、心肥大に関与することが知られる受容体活性化型イオンチャネルTRPC3/C6に着目し、HFpEFの発症・進展におけるその役割を解明するとともに、新規TRPC3/C6選択的阻害薬(L862)の治療効果を検証することを目的とした。 TRPC3/C6の遺伝的欠損および薬理学的阻害は、High fat Diet+L-NAME投与により作成したHFpEFモデルマウスにおける心臓の拡張機能と運動耐容能を改善した。またiPSCMを用いた実験により、L862が炎症性サイトカインによる心筋細胞レベルでのカルシウム動態異常を介した拡張機能障害を直接的に改善することが明らかとなり、その作用機序の一端が示された。 以上より、TRPC3/C6がHFpEFに対する有望な新規治療標的である可能性が示された。 | |||
| 小林 秀樹 アブストラクト 研究報告書 | 信州大学医学部附属病院 循環器内科 | iPS細胞由来心筋細胞移植における新規免疫抑制剤プロトコールの開発 | 100 |
| iPS細胞由来心筋細胞(iPSC-CM)の移植に最適化された免疫抑制剤プロトコールを確立することを目的として実験を行った。ヒトと同等の免疫システムをもつカニクイザルにおいて、ドナーから作製したiPSC-CMを心筋梗塞モデルのレシピエントに移植した。免疫抑制剤として、メチルプレドニゾロン(mPSL)、カルシニューリン阻害剤(CNI)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、およびアバタセプト(ABT)を組み合わせて投与し、段階的に減量した。mPSL+MMF+CNIの3剤併用下では急性拒絶反応を抑制できたが、MMF+CNIあるいはCNI単剤では効果は不十分であった。一方、MMFをABTに置換しCNIと併用することで、ステロイド中止後も拒絶反応を抑制できることが示された。ABT併用による新規免疫抑制プロトコールは、ステロイド離脱を可能とし、感染症や悪性腫瘍などの副作用軽減に寄与する可能性がある。 | |||
| 小室 仁 アブストラクト 研究報告書 | 慶應義塾大学医学部 循環器内科 | 非心筋細胞の心不全病態及び多臓器連関における役割の全貌解明とそれに基づく新規治療法開発 | 100 |
| 本研究は、心不全における非心筋細胞の役割を明らかにすることを目的とした。マウス圧負荷モデルのscRNA-seq解析により、心不全期特異的に出現するMyc高発現線維芽細胞を同定した。心臓線維芽細胞特異的Myc改変マウスを用いた解析では、Myc過剰発現により心機能が悪化し、欠損により改善した。RNA-seqおよびChIP-qPCR解析から、MycがケモカインCxcl1を直接転写活性化し、CFから分泌されたCxcl1が心筋細胞上のCxcr2を介して収縮機能を抑制することを示した。ヒト心不全検体でもMYC-CXCL1陽性線維芽細胞が増加していた。さらに、CFにおけるMyc発現の上流因子として炎症性サイトカインXを同定し、Cxcl1刺激により心筋細胞でERK経路が活性化されることを確認した。本研究は、線維芽細胞がMyc-Cxcl1-Cxcr2経路を介して心不全を惹起する新機構を示し、新規治療標的の可能性を提示した。 | |||
| 中尾 恭久 アブストラクト 研究報告書 | 愛媛大学大学院医学系研究科 循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座 | 新規病態モデルマウスを用いた大動脈中膜石灰化の分子機序解明 | 100 |
| 【背景・目的】O-ring誘導型大動脈狭窄(OTAC)モデルを用いて中膜動脈石灰化(medial arterial calcification:MAC)を再現し、血管平滑筋細胞(VSMCs)の骨軟骨様転化およびその微小環境変化を生体内・単一細胞レベルで解明することを目的とした。 【方法】C57BL/6JマウスにOTAC手技を施行し、術後1-8週で大動脈を解析した。組織学的染色、免疫組織化学、細胞系譜追跡、single-cell RNA sequencing(scRNA-seq)を実施した。 【結果】OTAC後、中膜において時間依存的に骨軟骨様細胞の出現と石灰化形成が認められた。α-SMA低下とSOX9、RUNX2上昇を伴い、系譜追跡によりこれらの細胞が収縮型VSMCsから直接転化したことが示された。scRNA-seq解析では、VSMCsの骨軟骨様転化に加え、周囲細胞の活性化を伴う局所微小環境の再構築が確認された。 【結論】OTACモデルはMACを再現可能な新規in vivoモデルであり、VSMCsの骨軟骨様転化が石灰化に先行することを示した。 | |||
| 中田 雄一郎 アブストラクト 研究報告書 | 千葉大学大学院医学研究院 疾患システム医学 | 心不全誘導性エピジェネティックメモリーの同定とその制御機構の解明 | 100 |
| 我々は、横行大動脈結紮により心臓に圧負荷を加えた心不全マウスから取得した造血幹細胞を移植したところ、レシピエントマウスが心不全を自然発症することを見出した。心不全の発症機序として、DNAやヒストンの化学修飾によって規定される炎症性免疫記憶“エピジェネティックメモリー”が造血幹細胞に刻印され、そこから分化した心臓マクロファージが慢性炎症と組織リモデリングを誘導し、心不全の自然発症に至ることが予想される。本研究では、異なるストレスによって形成されるエピジェネティックメモリーを横断・比較することで、心不全を駆動するエピジェネティックメモリーの制御機構を同定した。さらに、エピジェネティックメモリーを「リセット」するという従来にない全く新しい治療法を開発した。 | |||
| 増山 潔 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学 | 生体内心臓イメージングを用いて心筋細胞での遺伝子機能をin vivoで評価する革新的なシステムの構築 | 100 |
| 心臓は動的な臓器であるため生体内で比較する手法による評価が理想的であるが、技術的な問題から今までは固定後の評価や培養細胞での評価が主流であった。生体内で心筋細胞を評価するシステムを構築することで従来以上の知見が得られる可能性は大きいと考え、我々は遺伝子改変マウスとin vivo イメージングと組み合わせ、生体内での心筋細胞における遺伝子の機能を三次元的・動的評価法を確立した。 蛍光レポーターマウスを二光子顕微鏡で観察し、高い時間・空間分解能の画像を取得し、収縮能や大きさを評価する系を確立した。心不全モデルを作成し心筋細胞の変化を捉えることに成功した。 現在、遺伝子発現の有無で異なる蛍光を発する心筋細胞が混在するマウスを用いて、同一個体内で当該遺伝子の心筋細胞における影響を検証している。 このイメージングはあらゆる遺伝子に応用できることが可能であり、多様な疾患の病態解明に繋がる将来性を有する技術である。 | |||
| 劉 孟佳 アブストラクト 研究報告書 | 熊本大学国際先端医学研究機構 | 心筋線維化誘導マクロファージの細胞起源の解明 | 100 |
| 免疫系の中心であるマクロファージは、多様な組織で細胞間相互作用や間質環境を調節し、組織恒常性維持に重要な役割を担う。我々は、心臓には卵黄嚢や骨髄とは異なる心内膜由来マクロファージが存在し、成体にも残存することを報告した(Liu et al., 2023)。近年の知見から、マクロファージは起源により心筋線維化への関与様式が異なることが示唆されている。本研究では、心内膜由来マクロファージ欠損マウスと単球由来マクロファージを心臓特異的に誘導するマウスを用い、起源依存的な線維化制御機構を検証した。その結果、心内膜由来マクロファージは血管周囲線維化を抑制し、単球由来マクロファージは心筋間質線維化を促進することが明らかとなった。現在、空間トランスクリプトームや一核RNAシーケンスにより各系譜特異的な線維化制御シグナルの同定を進めており、起源に基づく選択的マクロファージ制御法への応用が期待される。 | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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| (留学先) | |||
| 児島 秀典 | 津山東クリニック | FLNC変異による心筋症・催不整脈のヒト単一核解析を含めた病態解明と根本的治療法開発 | 500 |
| Havard Medical School, U.S.A. | |||
| 長谷川 然 | 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科学 | 小児心筋症に対する改変ペプチド遺伝子治療薬の探索 | 500 |
| Icahn School of Medicine at Mount Sinai, U.S.A. | |||
| 研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 吉岡 望 アブストラクト 研究報告書 | 日本歯科大学 新潟生命歯学部 解剖学第1講座 | 心筋細胞におけるタンパク質凝集体の構成分子と形成機序の解明 | 100 |
| Dystonin(DST)遺伝子は、神経型のDST-a、筋肉型のDST-b、皮膚型のDST-eという3種類のアイソフォームを発現する。これまでに我々は、筋肉型のDst-bに特異的な遺伝子変異マウスにおいてタンパク質凝集体の形成を伴うミオパチーと心筋症を見出し、Dst-bが筋線維の長期的な維持に寄与する事を初めて報告していたが、今年となりDST-b遺伝子変異に起因する先天性ミオパチーと心筋症が初めて報告された。前年度までにDst-b変異マウスの心筋細胞においてオートファジーによる自食作用や小胞体ストレス応答による不良タンパク質のリフォールディング異常によって、心筋細胞においてタンパク質凝集体が形成されることを示唆した。今年度は、Dst-b変異マウスの心筋細胞に形成されるタンパク質凝集体の構成分子や凝集体形成に寄与する分子経路を解明するために、心筋組織における質量分析データに基づいて、DST-b変異による先天性心筋症の病態機序の解明を目的とした。 | |||